主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 150
【はじめに】
新潟県はまぐみ小児療育センター(以下,当センター)では,肢体不自由児への支援の一環として整形外科巡回相談(以下,巡回相談)を長年実施していた.社会背景の変化に伴う,相談事業の見直しを行ない,地域の療育技術向上並びに連携基盤の醸成のための,特別支援学校を会場とした新たな研修会を平成28年度から始めたので報告する.
【方法】
1.巡回相談の課題(1)交通インフラの整備がなされ,利用者や支援者が当センターまたは他施設への来所が可能になった(2)巡回訪問が単発になり,フォローアップが行いにくい(3)理学療法士への相談内容が,身体機能面に偏重し,学校での活動・参加の状況が把握しにくい(4)教職員の異動の度に同じ内容の相談が繰り返される(5)児童・生徒が放課後等デイサービス等を利用する頻度が増加している反面,教育・福祉・医療間の情報共有や連携を協議する場が少ないことが挙げられた.
2.新研修会の概要: (1)内容: 講義・事例検討・実践報告をワンパッケージとした,「リハビリの視点を活かす教育・福祉・医療スタッフのためのスキルアップ研修会(以下,研修会)」を実施(2)研修企画:当センターに加えて,会場となる特別支援学校,地域の障害者地域生活支援センターが事務局となり,情報共有や整理を行う仕組みを執った(3)理学療法士の役割: 研修会全ての内容に関与し,講義では参加者の共通認識としてICFの概念とその実際について説明.事例検討では講義に基づき,実際の授業場面に即した姿勢運動について参加者と検討した.
【結果】
平成28年~令和元年に3校の特別支援学校を会場とし,延べ78名が参加.参加者の内訳は教職員,相談支援専門員,児童指導員,看護師,理学療法士,言語聴覚士であった.今回の研修会では,参加者が,同じ講義を聞き,互いの施設で事例検討を行い,実践報告を行ったことで,学校内の生活,下校後,卒業後の生活を共有するよい機会となった.そのことから学校と事業所の連携が始まった.また研修会後の理学療法見学では,漠然と身体機能に関する助言を求めるのではなく,具体的な生活場面を示した質問が見られ始めた.しかし,県内の各地域には療育資源に差があることや関係者の転入出があり,上述の成功したパッケージをそのまま運用することは難しいと感じている.研修の目的や実施方法の定着には,研修の繰り返しが必要である.
【結論】
今回の研修では,教育・福祉・医療の職員が顔の見える関係構築が連携の基盤になったと思われる.研修を通して,理学療法士は生活機能に着目し評価・介入し,多職種の見学や質問に対応する機会を多く経験する等の支援特性を有している.その強みを活かし,単に姿勢や運動方法の指導を行う立場というだけではなく,多職種間で課題を整理し,対応策を共有する上で,主導的な役割を担うことが期待されていると感じた.
【倫理的配慮、説明と同意】
この報告において、個人名が第三者に特定されることがないこと、参加は自由意志であり拒否における不利益はないことを説明し口頭にて同意を得た。