日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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健康増進・ヘルスプロモーション3
健康経営における理学療法士の介入~ヘルスプロモーションの視点から~
財田 征典道下 将矢宮坂 裕輝山口 賢一郎
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p. 23

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抄録

【はじめに】

近年,健康経営・健康投資に対する企業の取り組みは関心を増している産業理学療法部門の中でも,多様化する労働者の健康確保,生産年齢人口の減少への対応が重要な課題となっており,理学療法士の経験と知識は企業及び労働者における諸問題解決の一役を担えると期待されている

今回は工作機械メーカーA社に勤務する社員を対象に,当院理学療法士による14週間の運動教室を実施した為,効果判定も踏まえて報告する

【方法】

対象はA社に従事するBMI25以上35未満の肥満,年齢35歳以上の男性,14週間の運動プログラムを完遂した49名(年齢53.6±7.0歳)とした

運動プログラムの内容は,全3回の対面指導とオンライン指導を実施した初回指導では6~8名1グループの集団指導(オリエンテーション・身体測定・有酸素運動指導・レジスタンストレーニング指導)を実施した中間指導では中間経過をもとに個別性のある介入を目的に3グループに分け指導を行ったAグループを順調に経過しており至適運動の再処方を目的とした追い込み型グループ,Bグループを結果が出ず停滞しており仲間意識の醸成よる動機付けを目的とした停滞型グループ,Cグループを疼痛や機能障害により運動継続が困難でありセルフケア指導や運動の代替手段の提案を目的とした非運動型グループとしたなお,A・Cグループは1対1指導,Bグループはグループワーク指導とした最終指導では最終測定の結果より17週間の成果と課題について個別フィードバックを実施した

効果判定として,メインアウトカムを14週間で体重2kg減量かつ腹囲2cm減少とし,運動教室前後での体重・腹囲・収縮期血圧・拡張期血圧に対応のあるt検定を行い,有意水準は5%とした

【結果】

メインアウトカムを達成した対象者は32名(65.3%)であった

ITT(intention-to-treat)分析の結果,運動教室前後で体重が平均2.7kg(86.1±10.9kg vs 83.5±10.7kg)(p<0.01),腹囲が平均4.1cm(100.6±7.6cm vs 96.5±7.9cm)(p<0.01),収縮期血圧が平均6.3mmHg(148.4±18.7mmHg vs 142.2±17.5mmHg)(p<0.05)と有意に減少した

【結論】

健康増進のための疾病一次予防を目的として運動教室を実施した初回指導では,行動変容ステージモデルでの関心期から準備期にあたるステージと考え運動療法と食事療法を重要視した指導を実施したしかし,7週経過した時点で体重減量できていない対象者が7割程度であった中間指導でのBグループに当たるグループワークにて,他者への行動宣言をし自己の解放を実施したこと,またオンラインツールを利用した遠隔的な指導によりメインアウトカム達成率向上に寄与し,A社の健康経営に貢献できたと考える

一方で運動習慣の定着には6ヶ月間要すとされており,継続したフォローアップが重要となると考える

理学療法士による14週間の健康増進運動プログラムは,体重減量・腹囲減少・収縮期血圧低下に効果的であった

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究は,当院の倫理委員会の承認を得て行われた

オプトアウトにより対象者の本研究への参加の拒否の機会を保障するため,研究計画の概要,利用する情報の種類と対象となる期間を本院ホームページ上に公開し,1ヵ月のオプトアウト期間の後に研究を開始した

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