日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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栄養・嚥下セレクション
健常若年者における姿勢条件が相対的喉頭位置にもたらす影響
松本 季吉田 剛冨田 洋介居村 茂幸
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p. 31

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抄録

【目的】

相対的喉頭位置は,測定の信頼性及び臨床的有用性が高いとされ幅広く使用されている.重力による姿勢筋緊張の影響を少なくするため側臥位で測定するが,内田は座位で測定し,吉田らよりも低い喉頭位置を基準値として報告した.本研究は座位で測定した相対的喉頭位置およびその信頼性を側臥位条件と比較することで、各姿勢条件における相対的喉頭位置測定の臨床的意義を検証することを目的とした.

【対象】

高崎健康福祉大学に通う健常成人大学生29名(男性5名,女性24名,年齢21.07±0.72歳)を対象とした.

【方法】

評価項目は側臥位・座位の2条件での相対的喉頭位置および各評価実施後の主観的負担度,反復唾液嚥下テスト,頸部可動域測定(屈曲・伸展・側屈・回旋)とした.本研究では(1)相対的喉頭位置の測定の信頼性検証,(2)測定の安楽性検証,(3)姿勢条件による差異の有無の検証およびその他の項目との関係,の3点を検証した.統計解析は(1)では各姿勢で実施した反復測定の結果から級内相関係数(以下,ICC)を算出し検者内信頼性を検証した.(2)ではWilcoxon の符号付順位和検定を用いて座位と側臥位における安楽性の差を検証した.3)では側臥位・座位間で相対的喉頭位置の差を大小で2群に分け,両群間の頸部側屈可動域をMann-WhitneyのU検定により検証した.有意水準は5%とした.

【結果】

(1)座位・側臥位ともにICC 0.94以上と高い検者内信頼性を示した.(2)座位2.79±1.80 点,側臥位2.17±1.64 点であり,側臥位での測定において安楽性が有意に高かった.(3)相対的喉頭位置の各姿勢条件での平均値は座位 0.37,側臥位 0.36あり,相対的喉頭位置は側臥位と比較して座位の方が下降していた.また,姿勢条件間の差が大きい群は座位の頸部側屈可動域が有意に小さかった.

【考察】

相対的喉頭位置が座位でより下降する対象者は,座位で頸部側屈可動域がより小さくなるといった姿勢筋緊張の影響を受けやすい結果となった.健常若年者での結果であり,高齢者や対象患者の測定時に,姿勢筋緊張の影響が入った測定がより嚥下運動障害を反映するのかは不明なため,今後はどちらの肢位での測定がより嚥下運動障害を反映するか検討する必要がある.開発者の設定した側臥位での測定は,対象者への負担も少なく,座位保持困難な時期から測定が可能である.実際の臨床現場での今後の応用的発展が望まれる.

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究は,ヘルシンキ宣言及び「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守した.研究対象者には書面及び口頭にて説明し同意を得た.なお,本研究は高崎健康福祉大学倫理審査委員会の倫理審査の承認を受けている(高崎健康大倫理第2011号).

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