日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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栄養・嚥下セレクション
高齢入院患者の入院時整容動作能力は院内肺炎発症リスクと関連する
宇野 勲久保 高明
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p. 32

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抄録

【はじめに】

高齢患者が入院中に肺炎を生じると予後不良の可能性が高くなる。院内肺炎の予防として口腔ケアの有効性が報告されているが、口腔ケアを含む整容動作の自立度が院内肺炎リスクと関連しているかは明らかになっていない。今回、院内肺炎予防の一助とすることを目的として、整容動作能力の自立度が院内肺炎発症に関連するかを調査した。

【方法】

本研究は2019年4月~2020年3月までに当院の地域包括ケア病棟に入院した65歳以上の患者を対象とした症例対照研究である。カルテ情報より院内肺炎発症の有無、年齢,性別,身長,入院時の体重,body mass index(BMI)、機能的自立度評価尺度(FIM)、残歯数、義歯の有無、口腔衛生状態、血清アルブミン値、Food Intake Level Scale(FILS)、Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)、必要エネルギー量、摂取エネルギー量、エネルギー充足率、Mini-Mental State Examinaton(MMSE)、在院日数、リハ処方疾患、入院元、退院先を調査した。院内肺炎発症は、入院から48時間以降にX線画像および臨床症状から主治医が新規に肺炎発症と診断した場合とした。院内肺炎発症の有無で2群に分け、各調査項目の群間比較を行った。また、院内肺炎発症と整容動作自立度との関連性を明らかにするためにロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。なお、本研究は当院の倫理審査委員会の承認得て行った(承認番号:2020-02)。

【結果】

肺炎群は25人、非肺炎群は191人であった。群間比較では、FIMの全項目の点数、性別(女性10人、男性15人対女性124人、男性67人)、MMSE(8.92±9.29対16.61±10.11)、FILS(7(3-8)対10(7-10))、BMI(17.94±3.56 kg/m 2 対20.16±3.74kg/m 2 )、GNRI(86.18±8.80対96.18±12.03)、エネルギー摂取量(911.40±487.12kcal対1154.66±469.09kcal)、エネルギー充足率(62±34%対75±29%)、在院日数(55.04±8.02日対45.02±16.46日)、退院先で有意差が認められた(p<0.05)。年齢、性別、GNRI、口腔衛生状態、MMSEで調整後、ロジスティック回帰分析では、整容動作自立度は院内肺炎発症と関連していた(OR=0.67, 95%信頼区間: 0.47-0.95, p=0.026)。

【考察】

今回の結果から、院内肺炎発症には入院時の整容動作の自立度、栄養状態、男性であることが関連していることが明らかとなった。整容動作は口腔や顔面周囲の清潔に関連するため、清潔保持が困難になることで院内肺炎リスクが増加した可能性がある。

【結語】

地域包括ケア病棟の高齢入院患者では、整容動作自立度が院内肺炎リスクと関連していた。今後は整容動作への介入が院内肺炎リスクを減らすことができるか調査していく必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づき研究計画を作成し、当院の倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号:2020-02)。

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