日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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地域実践活動1
COVID19の感染拡大による運動頻度減少が運動習慣を有する高齢者の身体機能及び精神的健康状態へ及ぼす影響
屋成 匠植田 拓也土屋 彰吾鹿内 誠也畠山 浩太郎前田 悠紀人柴 喜崇
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p. 46

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抄録

【はじめに、目的】

新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大によるロックダウンや活動の自粛による高齢者の健康に関する調査研究は世界的に報告されているが,郵送での質問紙調査やインターネット調査などの非対面形式の調査に限られている.そこで,本研究は,日本における第1回の緊急事態宣言期間(自粛期間)の運動頻度の変化が,地域在住高齢者の身体機能,精神的健康状態(Quality of Life: 以下,QOL)へ与える影響を明らかにすることを目的とした.

【方法】

対象は神奈川県A市のラジオ体操会に参加する高齢者から募集し,2018年の9月,10月に実施された体力測定会(以下,ベースライン調査)に参加した129名のうち,2019 年度及び2020年度調査の全てに参加した69歳~91歳の地域在住高齢者49名(男性: 28名,女性: 21名,平均年齢: 77.9±5.0歳)を対象とした.対象者には,5m最大歩行時間等の体力測定及びWHO-5精神的健康状態表(以下,WHO-5)を用いたQOL及び基本属性等の質問紙調査を実施した.また,2020年の調査では,想起法による自粛期間前と比較した自粛期間後の運動頻度の増減を調査し,減少した者を減少群,変化なしまたは増加した者を維持増加群の2群に分類し,自粛期間での運動頻度の変化が身体機能およびQOLに与える影響を検討した.

【結果】

対象者は,減少群19名(男性: 10名,女性: 9名,77.4±4.7歳),維持増加群30名(男性: 18名,女性: 12名,77.9±5.0歳)に分類された.ベースライン調査時点では,すべての測定項目において2群間で統計学的な有意差は確認されなかった.3時点における反復測定分散分析の結果,身体機能項目には群及び調査時期での交互作用は確認されなかったが,QOLの指標であるWHO-5得点で群と調査時期での交互作用が確認され,減少群においてWHO-5得点に2019年度と2020年の調査間での有意な低下が確認された(p=0.046).

結論: 運動頻度の増加はQOLの向上に寄与することが報告されている.自粛期間後の運動頻度の減少群においては,運動頻度の直接的な減少とともに,ともに運動する友人との接触頻度の減少にもつながり,精神的健康状態の低下の原因になったと考えられた.一方,身体機能については維持されていたが,本研究の対象者は,早朝にラジオ体操に参加可能な高い身体能力を有する元気高齢者であったと考えられ,自粛期間後の運動頻度の減少が直接的に身体機能の低下には影響しなかったと考えられた.

【結論】

COVID-19感染拡大による自粛期間後の運動頻度の減少は,運動習慣を有する高齢者においては,QOLの低下に影響するが,身体機能には影響を与えなかったことが示唆された.

【倫理的配慮、説明と同意】

対象者には,対面にて文章を用い研究の目的,個人情報の保護について説明を行い、同意書の提出を持って調査協力への同意意思を確認した。本研究は桜美林大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。

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