主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 48
【はじめに、目的】
社会的孤立(以下,孤立)は要介護認定や認知症発症,早期死亡へのリスクが有意に高くなることが示されており,さらに孤立高齢者は,抑うつ傾向や将来の不安も高いことが明らかになっている.そこで,孤立に至るのを予防するためには定期的な社会活動への参加頻度を高めることが重要であると示唆されている.しかし,どのような社会活動が孤立に影響するかを言及した報告はないため,社会活動の種類に着目し,どのような社会活動が孤立しないことと関連しているかを検討した.
【方法】
本研究は,A市に居住している要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者28,637名を対象にした高齢者実態調査のデータを用いた.本調査は自記式質問票の郵送により行い,対象となった28,637名のうち22,048名(男性10,028名,平均年齢74.1±6.2歳)から返送があった(回収率77.0%).調査項目は家族構成や現在の住まい,健康度自己評価,主観的経済状況,グループへの参加頻度,孤立状況とした.グループへの参加頻度はボランティアのグループ,スポーツ関係のグループ,趣味関係のグループ,学習・教養サークルにそれぞれどのくらいの頻度で参加しているかを調査した.孤立の判定は,別居家族・親戚,および,友人・知人との対面接触と非対面接触のいずれもが週に1回以下を「孤立」,それ以上を「非孤立」,孤立状況に関する質問に無回答の者を「孤立状況不明」とした.
【結果】
6,902名(31.3%)が孤立状態であった.孤立は性別による違いが大きく,女性の孤立者は2,738名(22.8%)であった一方,男性の孤立者は4,164名(41.5%)であった.また,従属変数を孤立の有無,独立変数を家族構成,現在の住まい,健康度自己評価,主観的経済感,各グループへの参加頻度としたロジスティック回帰分析の結果,週1回以上,趣味関係(オッズ比,95%信頼区間:0.32,0.28-0.37),ボランティア(0.38,0.30-0.48),スポーツ関係(0.49,0.44-0.55),学習・教養(0.52,0.41-0.66)のグループに参加している者はそれぞれの活動に参加していない者と比較して有意に孤立者が少なかった(すべてp<0.001).月1~3回の参加頻度では,ボランティア(0.61,0.50-0.75),趣味関係(0.65,0.57-0.73),スポーツ関係(0.66,0.55-0.79)が参加していない者と有意に孤立者が少なかったが(いずれもp<0.001),学習・教養(0.89,0.73-1.07)は有意でなかった(p =0.213).さらに,年に数回の参加頻度では趣味関係(0.83,0.69-0.99)のみが参加していない者と比べて有意に孤立者が少なかった(p<0.03).
【結論】
本研究の結果から,社会活動への参加頻度が週1回以上ではどの種類でも有意に孤立者が少ないこと,月に1~3回ではボランティア,趣味関係,スポーツ関係のグループで有意に孤立者が少ないこと,年に数回では趣味活動のみが有意に孤立者が少ないことが明らかになった.
【倫理的配慮、説明と同意】
調査協力者には,郵送時に文書にて研究の目的,個人情報の保護について説明を行い,調査票への記入を持って調査協力への同意意思を確認している.本研究は北里大学倫理委員会の承認を得ている.