主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 13
【はじめに、目的】
COVID-19流行下では感染拡大防止のためにフィジカルディスタンス(身体的、物理的距離)の確保が求められ、介護保険サービス利用者(サービス利用者)のサービス利用自粛が散見された。サービス利用者に対する通所・訪問リハビリテーションの提供が途切れることは、サービス利用者の身体機能低下等を招く恐れがあり望ましくない。本研究の目的は、介護保険下で通所・訪問リハビリテーションを提供する事業所におけるサービス利用者のサービス利用自粛の状況を検証し、将来起こりうる新興感染症の流行に備えた対策を検討することである。
【方法】
本研究はインターネットを活用した自己入力式質問紙調査である(調査時期:2021年10月22日-2021年11月19日)。対象はA県の介護保険下でサービスを提供する通所および訪問リハビリテーション事業所計683件である。対象事業所は厚生労働省の提供する介護サービス情報公開システムより抽出した。対象事業所に対しては、2020年1月から2020年12月にかけてのサービス利用自粛者の有無を確認した。さらに、対象期間中にサービス利用自粛者がいた事業所に対しては、サービス利用自粛者に生じた変化、およびサービス利用者がサービス利用を自粛した要因(複数回答可)を確認した。
【結果】
回答の回収率は17.3%(118/683件)、有効回答率は16.5%(113/683件)であった。対象期間中にサービス利用自粛者がいた事業所の割合は80.5%であった(91/113件)。サービス利用自粛者に生じた変化は、身体機能の低下が73.6%(67/91件)、活動意欲の低下が62.6%(57/91件)、認知機能の低下が49.5%(45/91件)、介助量の増加が47.3%(43/91件)であった。利用者がサービスの利用を自粛した要因は、「利用者がスタッフとの接触を避けた」が70.3%(64/91件)、「利用者が他利用者との接触を避けた」が64.8%(59/91件)、「サービスの利用が不要となった」が4.4%(4/91件)であった。
【結論】
本調査により、多くの通所・訪問リハビリテーション事業所でサービス利用自粛が生じていたこと、加えて、サービス利用自粛者には身体的、心理的に負の変化が生じていたことが明らかとなった。また、サービス利用自粛の要因はフィジカルディスタンスの確保が主であり新興感染症流行下に特有な結果が示された。本研究結果は、新興感染症流行下においても途切れなく介護保険サービスを提供するために、フィジカルディスタンスの確保を可能とするサービスの準備が必要であることを示唆している。
【謝辞】
本研究はJSPS科研費JP20K23150の助成を受けたものである。
【倫理的配慮,説明と同意】
全ての回答事業所からは本研究への参加に対する同意を得た。本研究は産業医科大学の倫理委員会の承認を得て実施した。