主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 14
【はじめに、目的】
COVID-19流行下では通所・訪問リハビリテーションにおける介護保険サービス利用者(サービス利用者)の感染予防を目的としたサービス利用自粛が認められた。サービス利用者には身体機能や活動意欲の低下などの負の影響が生じることが我々の調査でも確認されており、新興感染症流行下においてもサービス利用者に対して途切れなくリハビリテーションを提供するための手段が必要である。オンライン会議システムを用いた遠隔リハビリテーション(遠隔リハ)はフィジカルディスタンスを確保しつつ、新興感染症流行下においてもリハビリテーションの提供を可能とする手段の一つであると言える。しかし、介護保険下における遠隔リハの活用については議論が進んでいない。本研究の目的は、介護保険下で遠隔リハを実施する上での現状の課題を整理するとともに、介護保険下で遠隔リハを安全に実施する上での方法を検討することである。
【方法】
本研究はインターネットを活用した自己入力式質問紙調査である(調査時期:2021年10月22日-2021年11月19日)。対象はA県の介護保険下でサービスを提供する通所および訪問リハビリテーション事業所計683件である。対象事業所は厚生労働省の提供する介護サービス情報公開システムより抽出した。対象事業所に対しては、感染症拡大時に遠隔リハは有用かどうか、遠隔リハを実施する上での現状の課題、遠隔リハを安全に実施するための方法について確認した。
【結果】
回答の回収率は17.3%(118/683件)、有効回答率は16.5%(113/683件)であった。感染症拡大時において遠隔リハが有効であると回答した事業所の割合は55.8%であった。遠隔リハを実施する上での現状の課題は、「ICT機器を活用できる利用者がいない」が90.3%、「リハ実施時のリスク管理が難しい」が84.1%、「地域の医療機関との連携がとれておらず緊急時の対応が難しい」が64.6%であった。また、遠隔リハを安全に実施する方方法としては、「家族が同席可能な時に実施する」が85.8%、「緊急時の対応マニュアルを設定した上で実施する」が83.2%、「利用者宅に訪問看護師または訪問介護員が訪問している時に実施する」が67.3%であった。
【結論】
本調査は感染症拡大下における遠隔リハの有用性を示唆するものであるとともに、遠隔リハを介護保険下で実施するには、1)家族を含む第三者が利用者宅に在中時に実施する、2)緊急時のマニュアルを作成する、3)緊急時に備えて地域の医療機関等との医療介護連携を強化することが重要であることを示唆するものである。本調査結果を踏まえて、介護保険下で行う遠隔リハについては更なる議論が必要であると考える。
【謝辞】
本研究はJSPS科研費JP20K23150の助成を受けたものである。
【倫理的配慮,説明と同意】
全ての回答事業所からは本研究への参加に対する同意を得た。本研究は産業医科大学の倫理委員会の承認を得て実施した。