日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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予防一般口述1
脊椎固定術後患者における退院直後の身体活動量の術前予測因子
大坂 祐樹古谷 英孝星野 雅洋
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p. 15

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抄録

【はじめに,目的】

脊椎変性疾患に対する外科的処置は,疼痛やADLの改善に有効であると報告されている.しかし,脊椎術後患者の身体活動量(Physical activity:PA)は,術後2年経過しても健常者のPAを下回ることが報告されている.PAの低下は,生活習慣病の罹患率増大,QOLの低下,死亡率の増大等につながる.また術後1ヶ月のPAは手術侵襲や術後の臥床のため,術前と比較して低下すると報告されている.術前から退院後のPAを予測することが出来れば,術前の患者教育で有益な情報になり得ると考える.本研究の目的は,脊椎固定術後患者における退院直後のPAに影響を与える術前因子を明らかにすることである.

【方法】

対象は当院にて腰椎変性疾患または成人脊柱変形に対して,脊椎固定術(腰椎椎体間固定術または脊柱矯正固定術)を施行された者とし,独歩またはT字杖にて屋外歩行が自立している者とした.除外基準は再手術,外傷性疾患,他整形外科疾患手術の既往,重篤な心疾患または内科的疾患,中枢神経疾患,認知機能低下を有する者,当院のクリティカルパスから逸脱した者とした.測定項目は,活動量計(AM-121,タニタ社)より算出した退院直後の1日当たりの歩数,年齢,性別,BMI,診断名(腰椎変性疾患または成人脊柱変形),腰痛・下肢痛Visual analogue scale(VAS),30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),Functional Reach Test(FRT),等尺性膝伸展筋力とした.PAの測定手順は,当院退院時に活動量計を渡し,活動量計を退院翌日より1週間装着させた.活動量計は起床から就寝時まで装着し,通常の生活を送るように指導した.期間終了後,活動量計は郵送法にて返送させた.活動量計より得られた1週間の歩数の内,1日当たりの歩数が500歩未満の値は除外して,1日当たりの平均歩数を算出した.統計解析は,退院直後の1日当たりの平均歩数を記述的に要約した.また,従属変数を退院直後の1日当たりの歩数,独立変数をその他測定項目とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った(有意水準5%).

【結果】

対象は84名(女性36名,平均年齢±標準偏差69.4±10.4歳,平均BMI±標準偏差24.4±3.3)であった.診断の内訳は,腰椎変性疾患75名,成人脊柱変形9名であり,固定椎間数は中央値1椎間(範囲1 -10)であった.退院直後の1日当たりの平均歩数±標準偏差は,3004±1627歩であった.重回帰分析の結果,CS-30(β=101.5,p<0.05),年齢(β=-68.9,p<0.05)が抽出された.

【結論】

脊椎固定術後患者の退院直後の1日当たりの歩数は,本邦の成人の平均歩数6322歩と比較して低値であった.また,退院直後のPAには,術前下肢筋力と年齢が影響していた.術前患者教育として,術前CS-30が低値である高齢患者には術後PAが低下しやすいことを提示することで,術後のPA向上を促し,PA低下による弊害を予防することにつながると考える.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,苑田会倫理審査委員会の承認(承認番号第62号)を得て実施した.対象者へ研究の目的,方法,個人情報の取り扱い等について書面にて説明,同意を得た.

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