日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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予防一般口述1
腰椎術後患者の術前体幹筋量は術後腰痛の予測要因となる
岡﨑 陽海斗大坂 祐樹古谷 英孝山下 耕平星野 雅洋
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キーワード: 体幹筋量, 腰痛, 腰椎術後
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p. 16

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抄録

【はじめに、目的】

腰椎変性疾患患者はサルコペニアの罹患率が高く、腰痛や生活の質(以下:QOL)の低下に影響を与える。腰椎変性疾患に対する外科的処置は腰痛やQOLの改善に有効だが、術後に腰痛が残存する症例は少なくない。術後腰痛に影響を与える要因の一つとしてサルコペニアが考えられ、近年サルコペニアと腰椎術後患者の術後転帰との関連が多く報告されている。しかし、サルコペニアの診断に体幹筋量は反映されない。腰椎変性疾患において体幹筋の萎縮や脂肪変性は、腰痛や機能障害との関連が示されている。そのため、腰椎変性疾患患者の体幹筋量は術後腰痛に影響を与える可能性がある。腰椎疾患患者を対象とした横断研究では、体幹筋量は腰痛と関連することが示されているが、縦断的な研究は散見されない。本研究の目的は、腰椎術後患者の術前体幹筋量が術後6か月の腰痛に与える影響を調査することである。

【方法】

研究デザインは後ろ向きコホート研究とした。対象は2017年7月~2021年6月の間に腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症、腰椎椎間板ヘルニアに対して腰椎後方除圧術、腰椎椎体間固定術を施行した55歳以上の者とした。脊柱矯正固定術、再手術、脊椎以外の整形疾患手術の既往、脳血管疾患、評価困難、ペースメーカーの使用者は除外した。従属変数は術後6か月の腰痛Visual Analogue Scale(以下:術後VAS)とした。独立変数は術前の体幹筋量、骨格筋量指数(以下:SMI)、年齢、性別、BMI、術式、固定椎間数、骨密度、Charlson Comorbidity Index、術前VASとした。体幹筋量、SMIは、In Body S10(インボディ・ジャパン社)を使用し測定した。統計解析は単変量解析により要因を抽出し(有意水準20%)、抽出された要因を独立変数とした多変量解析(ステップワイズ法)を行った(有意水準5%)。

【結果】

169名(女性84名、平均年齢±標準偏差72.0±8.2歳、BMI24.7±3.2kg/m 2)を対象とした。術式の内訳は、腰椎後方除圧術31名、腰椎椎体間固定術138名、固定椎間数(中央値1、範囲0-4)であった。単変量解析の結果、体幹筋量(β=-0.16,p=0.03)、SMI(β=-0.11,p=0.13)、年齢(β=0.11,p=0.12)、固定椎間数(β=0.23,p<0.01)、術前VAS(β=0.17,p=0.02)が抽出された。多変量解析の結果、体幹筋量(β=-0.37,p=0.03)、固定椎間数(β=0.24,p<0.01)が抽出された。

【結論】

本研究の結果より、腰椎術後患者の術前体幹筋量は術後VASに影響を与えることが示された。このことから、術前の体幹筋量は術後の腰痛を予測することが可能であり、臨床的意義は深いと考える。腰痛患者に対する運動療法では傍脊柱筋断面積や体幹筋力の増加、腰痛改善の効果が認められている。そのため、術前から体幹筋量が減少している患者にはより腰痛予防を考慮した介入が必要である。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、苑田会倫理審査委員会の承認を得た後(承認番号142号)に実施した。研究機関はオプトアウト資料を院内の提示版に提示し、研究内容、研究参加拒否の機会を公開した。

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