日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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予防一般口述1
中年者におけるコロナ禍での外出自粛で自覚された身体の衰えが腰痛発生へ与える影響
牧迫 飛雄馬赤井田 将真白土 大成立石 麻奈谷口 善昭愛下 由香里福榮 竜也木内 悠人倉津 諒大
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キーワード: 腰痛, COVID-19, 健康観
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p. 17

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抄録

【はじめに、目的】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下では様々な生活様式の変化が生じ、日常生活での活動制限により、身体の衰えを感じることが少なくない。とくに中年期での腰痛の発生は労働生産性の低下を招く危険があり、予防が重要であると考えられる。本研究では、中年者を対象として外出自粛の生活で自覚された身体の衰えが腰痛の発生に影響するかを検証することを目的とした。

【方法】

40歳以上のYahoo!クラウドソーシング登録者を対象に縦断的なインターネット調査を行った。初回調査(2020年10月19日~28日)で回答のあった3,000名に追跡調査(2022年4月8日~22日)を行い、1787名から回答が得られた。そのうち、取込基準を満たし、初回調査で腰痛を有していなかった40~59歳の中年者846名(平均49.0±5.2歳、女性35.0%)を分析対象とした。初回調査から18か月経過した追跡調査において、腰痛ありと回答した者を腰痛の発生とした。初回調査では2020年4月~5月に発出された緊急事態宣言等に伴う外出自粛の影響を受けて身体の衰えを感じるか否かを聴取し、外出自粛による身体の衰えの自覚の有無を判定した。初回調査時点での1日の座位時間(分/日)を国際標準化身体活動質問票で調 べた。コロナ禍での腰痛発生の有無と外出自粛による身体の衰えの自覚の有無をχ2検定で比較した。また、腰痛発生を従属変数、 外出自粛による身体の衰えの自覚の有無を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い、オッズ比と95%信頼区間を算出した(年齢、性別、仕事の有無、BMI、座位時間を共変量)。

【結果】

18か月後の腰痛の発生者は74名(8.8%)であり、初回調査において外出自粛による身体の衰えの自覚を有する者は221名(26.1%)であった。腰痛の発生者における外出自粛による身体の衰えの自覚を有する者の割合は37.8%であり、腰痛の未発生者での25.0%と比較して有意に高い割合であった(p=0.02)。ロジスティック回帰分析の結果、腰痛の新規発生に対する外出自粛による身体の衰えの自覚ありの調整済みオッズ比は1.94(95%信頼区間1.17̶3.21)であり、コロナ禍での身体の衰えの自覚は将来の腰痛発生に有意に関連することが示された。

【結論】

コロナ禍の18か月間の追跡調査で、約1割の中年者で腰痛の発生が認められ、2020年4月頃の外出自粛生活で自覚された身体の衰えが腰痛の発生に関連していることが示唆された。腰痛発生を予防するうえで、自粛を余儀なくされる状況においても、心身機能の維持や生活習慣の改善等によって自覚される身体の健康観を維持することの重要性が確認された。腰痛の予防・改善を図るための理学療法評価および介入を行う上でコロナ渦における身体の衰えの自覚を加味することは有益であると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

鹿児島大学疫学研究等倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:200101疫‐改1)。

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