主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 18
【はじめに、目的】
地域在住高齢者における運動器疼痛は,フレイルや要介護発生のリスクファクターであり,死亡率の増加にも影響をおよぼすことが示されている.そのため,地域在住高齢者の運動器疼痛対策は健康寿命の延伸に不可欠であり,その新規発生を予防する介入戦略の開発が不可欠といえる.自験例の結果では,地域在住高齢者における運動器疼痛の新規発生には,身体活動量の低下が影響をおよぼすことが明らかとなっており,身体活動促進プログラムは運動器疼痛の新規発生を予防する可能性が高いと考えられる.そこで本研究では,地域在住高齢者に対する身体活動促進プログラムが運動器疼痛の新規発生を予防すると仮説を立て,本仮説をランダム化比較試験で検証することを目的とした.
【方法】
対象は65歳以上の運動器疼痛を発生していない地域在住高齢者42名(平均72.8歳)であり,運動教室への参加に加え,身体活動量の向上を図る介入群21名と運動教室のみに参加する対照群21名にランダムに振り分けた.介入期間は6ヵ月間であり,両群に対する運動教室では筋力トレーニングやバランストレーニングから構成された60分間の運動プログラムを週1回実施した.介入群に対する身体活動促進プログラムは,歩数計を配布し,日々の歩数を日記に記録するセルフマネジメントを行う内容から構成し,歩数に関しては,介入後1ヵ月毎にベースライン時の平均歩数より10%ずつ増加することを目標とした指導を行った.評価項目は運動器疼痛新規発生の有無,運動機能(椅子起立時間,TUG,6分間歩行距離),心理面(GDS-15,FES),認知機能(数字符号置換検査),身体活動量(加速度計)とし,これらの評価項目を介入前後で比較した.
【結果】
対照群の内,1名が介入を完遂できなかったが,脱落者と実施率において2群間に有意差を認めなかった.介入後の運動器疼痛の新規発生者は,介入群1名(4.8%)と対照群7名(35.0%)であり,介入群で有意に低値を示した.また,6分間歩行距離と身体活動量において2群間で交互作用を認め,介入群が対照群より有意に改善し,数字符号置換検査では介入群のみ介入後に有意に改善した.
【結論】
地域在住高齢者に対する身体活動促進プログラムは運動器疼痛の新規発生を予防し,運動耐容能や身体活動量の向上ならびに認知機能の改善にも有効である可能性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言の趣旨に沿い本研究の主旨及び目的について口頭もしくは書面にて説明し同意を得た.具体的には,全ての対象者に対し自由意思による参加であること,研究参加を拒否した場合でもなんら不利益を被らないこと等を事前に説明した.データは全て匿名・コード化し,保管庫に格納して施錠した.なお,本研究は大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:18051027-2).