日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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予防セレクション1
地域在住高齢者における座位の中断回数および連続座位パターンとサルコペニアの関連性
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p. 4

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抄録

【はじめに、目的】

座位行動(Sedentary Behavior:以下、SB)は、エネルギー消費量が1.5METs 以下の覚醒行動であり、SBの蓄積は非感染性疾患の発生や死亡率の増加など、様々な有害事象と関連する。昨今、活動量計を使用し、座位中断回数(以下、Break数)や1回当たりのSBの連続量(以下、SB Bout)など、より詳細なSBの様式を分析した研究が報告されている。SB時間の延長は、サルコペニアのリスクを増大させることが報告されているが、これまでは質問紙にてSB時間を評価した研究が多く、活動量計にて評価される詳細なSBの様式とサルコペニアの関係性は不明な点が多い。これらが明らかとなれば、サルコペニアの新たな対策の知見となる可能性がある。本研究では、サルコペニアに対するBreak数と長時間SB Boutの関係性について検討した。

【方法】

地域コホート研究(垂水研究2018)の参加者において、三軸加速度計(HJA-750C Active style Pro オムロンヘルスケア社)にて活動量を計測した地域在住高齢者265名のうち、主要データに欠損がなく基準を満たした208名(74.7±5.9歳、女性59.3%)を対象とした。活動量データの有効基準は週4日以上かつ1日10時間以上とし、活動量の評価項目は、SB時間(分/日)、中高強度身体活動(以下、MVPA)時間(分/日)、Break数(回/座位1時間)、30分以上SB Bout 数、60分以上SB Bout数(いずれも回/日)とした。計測機器の装着時間(分/日)も計測した。サルコペニアは四肢骨格筋指数、握力、歩行速度にて判定した。統計解析は、サルコペニア群と非サルコペニア群の2群間比較を実施した。また、サルコペニアの有無を従属変数、Break数と30分以上、60分以上のSB Bout数を独立変数とした3通りのロジスティック回帰分析を行った。共変量は年齢、性別、MVPA時間とした。

【結果】

対象者のサルコペニアの割合は17.3%であった。マンホイットニー検定の結果、Break数は非サルコペニア群7.9(6.3 ‐9.4)回、サルコペニア群6.7(4.7-8.1)回であり、非サルコペニア群が有意に多く(p<0.01)、60分以上SB Bout数は非サルコペニア群0.9(0.6-1.3)回、サルコペニア群1.4(0.8-1.6)回と有意にサルコペニア群の回数が多かった(p<0.01)。ロジスティック回帰分析の結果、Break数とサルコペニアの関連は、オッズ比0.81(95%CI:0.68-0.95)、60分以上SB Bout数とサルコペニアの関連は、オッズ比2.08(95%CI:1.27-3.47)であり、いずれも有意にサルコペニアと関連していた。30分以上SB Bout数はサルコペニアと有意な関連を認めなかった。

【結論】

MVPA時間と独立して、1時間当たりの座位中断回数と60分以上連続する座位行動の回数はサルコペニアと関連していた。高齢者のサルコペニアに対する理学療法を講じる上で身体活動量の増大は重要であるが、日常生活における座位行動の中断や縮減に着目した指導・介入が重要である事が示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

鹿児島大学疫学研究等倫理委員会の承認(170351疫)を得て実施した。ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には研究内容について口頭と書面にて説明し同意を得た。

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