日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
会議情報

IOT,ICT
コロナ禍におけるLINE公式アカウントを活用した介護予防事業の有効性
大河原 和也大矢 敏之
著者情報
キーワード: COVID-19, 地域在住高齢者, ICT
会議録・要旨集 フリー

p. 43

詳細
抄録

【はじめに、目的】

コロナ禍において、緊急事態宣言などの外出自粛により、身体・認知機能、フレイルの悪化が報告されており、通いの場が休止した際の代替的な介護予防事業の開発が急務である。このような背景から、ICTを活用した介護予防事業は急速に拡大しているものの、操作の煩雑さやデータ通信量などの観点から、まだまだ不十分な状況である。北海道鷹栖町ではLINE公式アカウント(以下、公式LINE)を活用して、緊急事態宣言中も地域在住高齢者の運動継続を促進するための事業を実施した。本研究では、事業の受容性や運動習慣と身体機能に及ぼす影響について検証し、事業の有効性について検討することを目的とした。

【方法】

対象は介護予防事業に参加する地域在住高齢者のうち、当施設の公式LINEに登録済みかつ本事業への参加を承諾した20名(男性2 名、女性18名、平均年齢70.2±5.2歳)とした。実施期間は、緊急事態宣言期間中の2021年9月とした。事業内容は、公式LINEにて運動プログラムを毎朝配信し、参加者は自宅にて午前・午後の1日2回その運動を行い、運動終了後公式LINEのチャットにて報告するという一連の流れを1ヶ月間実施した。事業終了後、受容性の評価として5件法を用いた満足度や「健康づくりに役立ったか」の調査、運動習慣の評価として、2020年5月と今回の緊急事態宣言中それぞれの運動頻度の調査をwebアンケートにて実施した。身体機能の評価として、5回起立テスト、片脚立位時間を介入前後に計測し、Wilcoxon符号順位検定を用いて比較した。統計学的有意水準は5% とした。

【結果】

参加者20名のうち、事業完遂できたのは18名(90%)、アンケート回収率は100%であった。事業における有害事象は生じなかった。受容性について、満足度は14名(70%)が「とても満足」、6名(30%)が「やや満足」と回答した。「健康づくりに役立ったか」の質問には、14名(70%)が「とても役立った」、5名(25%)が「少し役立った」と回答した。運動習慣について、2020年5月の緊急事態宣言中に週2回以上運動継続していたのは5名(25%)であったが、今回は20名全員が週2回以上運動を継続した。身体機能について、5回起立テストは介入前後で有意な改善が認められた(p<0.05)。

【結論】

参加者の事業完遂率、満足度は高い結果であり、公式LINEを活用した介護予防事業の受容性は良好であることが示された。また、運動習慣の継続や身体機能の維持・改善の効果も期待できた。以上より、対象者は限局されるものの、本事業はコロナ禍において対面での介護予防事業の代替手段になることが示唆された。今後は対象者を拡大するとともに、スマートフォンの操作に不慣れな方への導入方法や事業の有効性の検討も進めていきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に則り、対象者に対して研究の目的、内容、対象者の有する権利、個人情報の取り扱いについて口頭にて十分な説明を行い、参加の同意を得た上で実施した。

著者関連情報
© 2022 日本予防理学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top