主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 44
【目的】
近年,急性期医療でも各種疾患を背景にサルコペニアを有する高齢者の割合は年々増加傾向であり,サルコペニアを適切に理解し予防・改善することは重要である.しかし,サルコペニアの有病率は定義や属性によって大きく異なり,また急性期病院での有病率や発生率の報告は少ない.さらに,急性期病院の入院期間中のサルコペニアの発生要因について,入院時の運動・認知・精神機能の多面的な側面から検討した報告も少ない.本研究では,急性期病院に予定入院となった高齢者のサルコペニアの有病率・発生率とその要因について多面的に検討した.
【方法】
対象は,2021年5月17日~8月31日の期間に在宅より予定入院し,調査に同意が得られた65歳以上の高齢者93名(平均年齢75±5.6歳)とした.評価項目は,基本属性(年齢・性別・Body Mass Index・入院目的),経過(手術・リハビリテーション介入・合併症・せん妄・尿道留置カテーテルの有無),入院時の運動・認知・精神機能,フレイルの有無とした.運動機能では握力,大腿四頭筋筋力,椅子起立時間,Timed up and Go,開眼片脚立位時間,10m歩行時間の6項目を測定し,認知機能ではMini-Cog,精神機能ではGeriatricDepression Scale-15を測定した.サルコペニアの判定は,AWGS が2019に報告した診断方法を使用し,またフレイルは日本版CHS 基準を用いた.分析は,対象者93名から入退院時のサルコペニアの有病率を算出した.その後、入院時にサルコペニアに該当しない73名について,入院中にサルコペニアが発生した発生群と未発生群の2群に分類し,各評価項目の群間比較を実施した.統計解析は Mann-Whitney U 検定またはカイ二乗検定を用いた.その後,サルコペニアの発生の要因について交絡因子を制御した上で,ロジステック回帰分析を実施した.
【結果】
サルコペニアの有病率は入院時に22%,退院時には34%であった.また入院中にサルコペニアが発生した発生群は13名(18%)であり,維持群は60名(82%)であった.発生群と未発生群の群間比較では,BMIは未発生群と比較し発生群は有意に低値を示し,また発生群は有意にフレイルの割合が高かった.運動機能では,握力で発生群は未発生群と比較し有意に低値を示し,椅子起立時間,TUG,10m歩行時間は有意に高値を示した.サルコペニアの発生の有無を従属変数としたロジスティクス回帰分析では, BMI(OR:0.593)とフレイル(OR:8.465),握力(OR:0.833)が有意な変数として選択された.
【結論】
予定入院患者のサルコペニアの有病率は入退院時ともに先行研究と同様の傾向を示したが,発生率は先行研究と比較し高かった.さらに,サルコペニア発生の要因にはBMIや握力,フレイルが抽出されたが,その中でも入院時のフレイル判定は重要であることが示唆された.これらの結果により,急性期病院におけるサルコペニアの発生予防には,入院時のフレイル判定が重要で,これら高齢者に対しリハビリテーションや栄養療法など予防的な介入の必要性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に沿って実施し,所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:17)