日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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サルコペニア予防
足関節底屈筋における爆発的筋力、最大筋力、筋厚の加齢変化
加藤 丈博王 紫敏佐々木 彩乃池添 冬芽太田 恵建内 宏重市橋 則明
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p. 45

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抄録

【はじめに、目的】

筋機能の加齢変化においては、最大筋力よりも爆発的筋力(Rate of force development、以下RFD)の方が加齢に伴い大きく低下するとされている。しかし、先行研究では脚伸展筋や膝伸展筋を対象に若年者と高齢者を比較したのみで、中年期を含めて詳細に検討したものは少ない。足底屈RFDは姿勢制御能力との関連が大きい重要な筋機能の一つであるが、足底屈RFDの低下が加齢変化のいつから生じるかについては明らかにされていない。さらに、最大筋力に影響を与える要因の筋量はRFDへの影響が小さいことから、筋量とRFDの加齢変化も異なる可能性が考えられる。本研究の目的は、中年期を含めた足関節底屈筋のRFD及び最大筋力、筋量の加齢変化について明らかにすることである。

【方法】

対象は健常女性85名(年齢:21-69歳)で、多用途筋機能評価運動装置(BIODEX社製)を用いて足関節底屈の等尺性最大筋力、RFDを測定した。RFDは、「できるだけ強く速く」力発揮した時の力時間曲線において、力発揮開始から50ms時点のトルク値を時間で除した値を算出した。筋量の指標として、超音波画像診断装置(日立社製)を用いて臥位にて下腿三頭筋(内側腓腹筋、ヒラメ筋)の安静時筋厚を測定した。対象者は20-30歳代をyoung群(Y群:25名、29.3±6.4歳)、60歳以上をold群(O群:21名、64.9±5.7歳)とし、中年期に関しては40歳代をyoung-middle群(YM群:22名、45.4±2.6歳)、50歳代をold-middle群(OM群:17名、54.0±2.8歳)の計4群に分類した。反復測定分散分析およびTukeyの多重比較法を用いて最大筋力及びRFD、筋厚を4群間で比較した。なお、最大筋力およびRFDはそれぞれ2回の最大値を分析に用いた。

【結果】

分析の結果、最大筋力に群間差はなかったが(Y群で101.1±37.5Nm、YM群91.9±32.3Nm、OM群77.7±21.7Nm、O群93.5±29.1Nm)、RFDではY群に対して、OM群、O群で有意に低下していた(Y群242.9±132.0Nm/s、YM群209.7±107.2Nm/s、OM群143.0±71.4Nm/s、O群146.2±89.0Nm/s)。また、筋厚に関して、ヒラメ筋では有意差なかったが(Y群20.3±5.5mm、YM群20.8±7.1mm、OM群16.7±5.2mm、O群20.9±6.5mm)、内側腓腹筋ではY群に対してO群で有意に減少していた(Y群16.7±2.9mm、YM 群16.3±3.6mm、OM群14.6±2.8mm、O群14.0±3.2mm)。

【結論】

健常女性において、足底屈爆発的筋力は中年期の50歳代から低下し、最大筋力低下や筋量減少よりも先に加齢変化が生じる。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は所属施設の倫理委員会の承認を受けており(承認番号R0548-4)、倫理的配慮はなされている。対象者には本研究の主旨や目的及び方法について十分に説明した上で書面にて同意を得た。

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