主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 53
【はじめに、目的】
身体機能の非対称性は外傷・障害発生と関連があることが示されているが、成長期を対象とした研究は少ない。そこで本研究では、男子小中高校生のバスケットボール選手を対象に、身長成長速度曲線に基づいた各成長区分(以下、phase)における身体機能の非対称性の出現とバスケットボール選手に頻発する膝関節前面痛(以下、膝前痛)との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
小学3年生~高校3年生の男子バスケットボール選手51名を対象とした。アンケートにて基本情報、小学1年生から1年毎の身長、膝前痛について聴取し、膝関節屈曲、伸展の筋力測定、大腿四頭筋および大腿二頭筋の筋厚測定、straight leg raising test(以下、SLR)、heel buttock distance test、single leg hop test(以下、SLH)を実施した。身長成長のアンケートでは、小学1年生から現在までの1年ごとの身長、身長成長の状態を聴取した。これらより、年間身長増加量を算出し、身長成長の状態も考慮し身長成長速度曲線に基づいた4段階のphase分けを実施した。統計解析は、今回十分な対象者が確保できたphase2の17名、phase3の26名を対象とした。各phaseの軸足と非軸足の各測定項目の群間比較、外傷・障害に関連する非対称性のカットオフ値をもとに非対称性がある群・ない群に群分けし膝前痛との関連を明らかにする目的でカイ二乗検定、各phaseにて膝前痛の有無で群分けを実施し各測定項目の群間比較を行った。
【結果】
phase2では軸足-非軸足間で大腿四頭筋筋厚(軸足3.98±0.42cm、非軸足3.87±0.53cm)とSLH(155.4±24.3cm、151.5±20.1cm)において中等度の効果量が認められた。phase3ではハムストリングス筋力(1.37±0.29Nm/kg、1.44±0.34Nm/kg)とSLH(180.9±25.4cm、185.1±25.4cm)において中等度の効果量が認められた。非対称性カットオフ値と膝前痛発生に有意な関連はみられなかった。各phaseの膝前痛有無における測定項目の群間比較では、phase2において膝前痛あり群の非軸足膝伸展筋力(膝前痛なし群0.76±0.16kgf/kg、膝前痛あり群0.56±0.08kgf/kg)、大腿四頭筋筋厚(4.00±0.64cm、3.68±0.25cm)、SLR(69.7±4.5°、63.7±7.8°)が膝前痛なし群より低値を示した。
【結論】
本研究では成長期バスケットボール選手の身体機能の非対称性の出現と膝前痛の関連についての関連は認められなかった。しかし、各phaseにて非対称性出現の傾向が捉えられたことや研究の限界としてサンプルサイズの不足が挙げられることから、これらの関連は否定しきれず今後の研究課題である。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は高崎健康福祉大学の倫理委員会の承認を受け実施した(承認番号:高崎健康大倫第2066号)。本研究は、ヘルシンキ宣言および人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき、対象者には測定の目的、方法、内容等を口頭および書面にて説明し、本人と保護者および指導者の同意を得た後に測定を実施した。