主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 54
【はじめに、目的】
過去に経験したスポーツ傷害の再受傷を予防することは、傷害の発生率を減少させる上で不可欠である。再発率が高いとされるハムストリングの肉離れや足関節捻挫などは、再発の危険因子や予防のためのトレーニングについては過去に多く報告されており、対策を講じることは可能である。また、傷害予防のためには、第1 段階として傷害調査を行うことが提唱されており、各機関で実態の把握をすることが推奨されている。しかし、大学生のスポーツ選手の再発状況に着目して傷害発生状況を調査しているものは少ない。本研究では、大学生のスポーツ選手に対して傷害調査を実施し、再発した傷害の傾向を探ることとした。
【方法】
対象は、本学に在学する学生800名に募集をかけ、アンケート調査への同意が得られた148名とした(回収率:18.5%)。2021年12月15日~31日の期間でGoogleフォームを用いてアンケートを実施し、2021年1月1日~12月15日までの約1年間について後方視的に調査した。調査項目は、基本情報、競技種目、傷害の詳細(新規/再発、傷害の種類、部位、重症度、医療機関の受診の有無、医療機関を 受診しなかった理由)とした。傷害の定義は、チームドクターや アスレティックトレーナーなど、チーム関係者に相談したものとした。重症度は、傷害により練習に参加できなかった期間をもとに分類し、軽症から重症まで0日(Slight)、1-3日(Minimal)、4-7日(Mild)、8-28日(Moderate)、28日以上(Severe)の5段階とした。
【結果】
回答者148名(平均年齢20.8±1.8歳)の内訳は、男性89名、女性59名で、37競技の選手が回答した。回答者は多い順にバスケットボール(18名)、陸上短距離(15名)、陸上長距離(13名)であった。傷害発生件数は81件で、うち20件(22.2%)が過去に経験した傷害の再発であった。再発した傷害の種類は、多いものから、ハムストリングの肉離れが7件、足関節捻挫が2件、肘関節捻挫が2件と続いた。重症度は、軽度から順に、Slightが4件、Minimalが4件、Mildが4 件、Moderateが5件、Severeが3件であった。20件中14件(70.0%)は医療機関を受診していなかった。医療機関を受診しなかった理由として、「過去にも同じ経験をしたことがあるから」という旨の回答が5件みられた。
【結論】
ハムストリングの肉離れや足関節捻挫の再発率は高いことが報告されているが、本対象でも再発による受傷がみられた。また、重度の傷害に発展する可能性があるにも関わらず、医療機関を受診しないケースが半数以上を占めており、再発した傷害に対する危険度の認識が低いことが示された。傷害発生後はリハビリテーションを実施して筋の柔軟性や筋力の値をもとに競技復帰を判断する必要があるが、それらが曖昧なまま自身で判断している可能性がある。再発に関して過小評価をされている現状に対し、まず、筆者ら医療従事者が傷害の再発状況を認知し、再発予防を視野にいれたサポートを行う必要がある。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号:E-2659)。