日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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転倒予防2
Timed Up & Go Testの左右差と動的バランス能力の関連性 -健常成人男性を対象として-
小尻 剣也平岩 和美
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p. 91

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抄録

【はじめに、目的】

転倒予防に寄与する検査の中でTimed Up & Go Test(以下TUG)は下肢筋力・バランス・歩行能力・易転倒性との関連性が高く,身体機能評価を行うことが出来るなど重要度が高いテストである.一般にTUGの実施は左右の回る方向を指示していない.そこでTUGの左右差の特徴と動的バランス能力にどのような関連性があるか調査することを目的とした.

【方法】

対象は健常男性10名(21.4±0.49歳).TUGの測定は,椅子から立ち上がり3m先の目標物まで歩行した後,方向転換して元の椅子に戻るまでを右回り・左回り(TUG右、TUG左)についてスマートフォンを用いて記録した.また目標物通過~方向転換~目標物通過の時間を方向転換区間とし,所要時間とturnを検討した.動的バランスは酒井医療製DYJOC BOARD PLUS SV-200(以下DYJOC BOARD)を用い,不安定な支持面上で立位にて姿勢制御能力を30秒間計測した.統計処理はwidows Excel 2016 statcel4により正規分布が確認できたデータにt検定とピアソンの相関を用い有意水準を5%とした.

【結果】

TUG所要時間(秒)は左7.899±1.46,右7.941±1.70,方向転換区(左)1.133±0.24,方向転換区(右)1.267±0.24,TUG差(右-左)は0.042±0.51となり,統計的な左右差は認めなかった.

TUG方向転換区間(右)はTUG左・右、TUG方向転換区間(左)と,TUG右はTUG左,TUG差,TUG方向転換区間(右)と正の相関が認められた.TUGと動的バランスはTUG方向転換区間(右)が全方向安定指数,全方向平均変位と負の相関が認められ,左右平均変位と正の相関が認められた.

TUG方向転換区間(左)は全方向安定指数,前後安定指数,全方向平均変位と負の相関が認められ,左右平均変位と正の相関が認められた.

ボールを蹴る足を利き脚とした場合,対象者の利き脚は左2人,右8人であった.方向転換時のturnは利き脚側への方向転換がspin turn,非利き脚側への方向転換がstep turnと方向転換両側共にspin turnという結果が3例ずつであった.利き脚側への方向転換がspin turnは6例であった.利き足とturnについてTUG所要時間の差はみられなかった.

【結論】

TUG所要時間が短い人は動的バランスが右に偏る傾向があり,動的バランスが低く,TUGの左右差が少ない.TUG方向転換区間(右)はTUG左右、動的バランスと関連性が高い.

利き足,turnとの関連性については対象者を増やし,さらに検討が必要である.

【倫理的配慮,説明と同意】

研究内容について対象者には研究依頼書と同意書を用いて口頭で説明した.研究依頼書には本研究の目的・意義,測定方法を記入し,協力は任意で同意しない場合であっても不利益にならないことを述べるとともに,データ分析結果は統計的に処理することを説明した.本研究はヘルシンキ宣言に基づき,広島都市学園大学研究倫理委員会により承認を得て行った(承認番号2012007号).なお本研究において利益相反は生じていない.

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