日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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転倒予防2
脊椎圧迫骨折保存療法患者の退院後の運動機能の経時的変化
石山 雄一白谷 智子中崎 秀徳鈴木 啓太渡邊 真衣福澤 優偉
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p. 92

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抄録

【はじめに、目的】

脊椎圧迫骨折(以下、VCF)は、骨粗鬆症に起因する骨折として最も頻度の高い骨折である。多くの場合、保存療法が選択され、予後良好な疾患として報告されている。一方、VCF受傷後は、続発性骨折を発生するリスクが高いことが報告されており、退院後、運動機能や日常生活を維持、さらに改善を図る必要がある。しかし、VCF 受傷後の経時的変化に着目した報告は少なく、運動機能が維持、改善しているかは不明である。そこで今回、当院に入院し、自宅退院となったVCF患者の運動機能の経時的変化について調査することを目的とした。

【方法】

対象は、令和3年3月~令和4年3月に当院に入院し、自宅退院となったVCF保存療法患者60名のうち退院後、定期診察を受診した7名(平均年齢79.7±4.2歳、男性2名、女性5名)とした。全対象者の既往には骨粗鬆症、脳疾患、心疾患のいずれかがあり、既往歴がないものはいなかった。

運動機能評価は、等尺性膝伸展筋力・握力・Timed Up & Go test(以下、TUG)とし、測定は退院時、退院後1か月、退院後2か月、退院後3か月に実施した。測定した運動機能項目については、退院時の測定値を基準値とし、変化率(退院後の測定値-退院時の測定値)(退院時の測定値)/ ×100(%)を算出した。それぞれの運動機能項目で得られた変化率を退院後1か月、退院後2か月、退院後3か月の3群に分け、反復測定による一元配置分散分析を行い、水準間の有意差検定にBonferroniの方法により多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。

【結果】

反復測定による一元配置分散分析の結果、等尺性膝伸展筋力(平均±標準偏差)では、右側で退院後1か月(13.9±11.4%)、退院後2か月(16.9±9%)、退院後3か月(7.1±12.5%)であり、多重比較の結果、退院後2か月と退院後3か月にて有意な減少を認めた(P<0.05)。その他、等尺性膝伸展筋力(左)・握力(左/右)・TUGでは有意差を認めなかった。

【結論】

VCF受傷後の運動機能は、退院後ある程度保たれるが、退院後3か月を境に等尺性膝伸展筋力が減少するという結果が得られた。先行研究より、等尺性膝伸展筋力の低下は、移動能力や易転倒性に関連があることが報告されていることから経時的な変化によって再受傷することが懸念される。そのため退院後も定期的に運動を行えるような運動指導や介護サービスの利用を入院中から提案し、寝たきりや要介護状態への移行を防ぐ必要があると考える。今回は、運動機能の変化に着目しており、活動能力や生活空間との関係性は調査できていない。今後は症例数を増やし、長期的な運動機能の変化を調査するとともに、介護予防効果について調査していく必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、ヘルシンキ宣言に則って行い、得られたデータは個人情報が特定できないように配慮した。

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