日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: SOS-01-1
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産業OS1
治療と仕事の両立支援 ~理学療法士の参画~
久原 聡志伊藤 英明永田 昌子佐伯 覚
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抄録

日本では疾患を持つ労働者に対する治療と仕事の両立支援の取り組みが本格化している.2018年度の診療報酬改定で『療養 ・就労両立支援指導料』が新設され,2020年には理学療法の主要な対象疾患でもある脳血管疾患等が追加され,2022年度の改定で算定対象に心疾患も追加された.治療と仕事の両立支援は,疾病の増悪,再発や労働災害が生じないよう,就業場所や作業の変更,労働時間の短縮など,適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行うことが前提となる.特定の身体機能障害がなく,外見上は健康に見える疾患の場合は,事業所が労働者の身体・精神心理機能の低下を想像することは難しく,事業所との条件調整が困難なケースも少なくない.この点において,理学療法士は,身体機能や高次脳機能障害等の評価,疾病の予後予測も含めた復職の可否や時期の提案などが具体的にできる職種である.復職後の業務上の配慮の有無がメンタルヘルスに与える影響を調べた我々の研究では,就業配慮が不十分であった場合に復職後のメンタルヘルスの増悪を認めた.疾患をもった労働者においても,復職時のFitness for Work の合理的配慮の中に理学療法士が関与することは,安全で健康的な復職と就労継続に繋がり,事業所の生産性を維持するための有効な手法の1つとなる可能性がある.現在,就労上の措置等に関する意見等の就労と療養の両立に必要な情報を提供した場合に,療養 ・就労両立支援指導料や相談支援加算といった診療報酬が算定できるが,理学療法士はその職種に含まれていない.高年齢労働者が増加し,そのニーズが増える可能性が高いことから,理学療法士も参入できるようにデータを示していかなければならない.一方,事業所側の取組み状況については,様々な疾患において両立支援に関わる取組を実際に行っている事業所は 46.7%に留まっており,そのうちの76.2%がその取組みに対して問題を抱えている状況である.今後も世代や業種を問わず治療と仕事の両立を希望する労働者が増えることが予測され,医療機関と事業所のそれぞれの取組みとともに,医療機関と事業所の連携が重要である. 今回,我々の職場復帰への取り組みの現状や当院の両立支援科 との連携など,両立支援に関する実際の事例を交えて紹介する.

【倫理的配慮】

紹介する研究は産業医科大学倫理委員会の承認を得ており、報告する事例は本人の同意を書面にて得ている。

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