主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに、目的】
歩行中の転倒や衝突事故を未然に予防する ためには、足元の障害物や段差だけでなく遠方の歩行者などにも視線を向け、足元と遠方の状況を同時に管理する能力必要がある。しかし、その能力を強化する具体的な練習方法は明らかではない。そこで我々は、足元と遠方の状況を同時に管理しながら適切な視線誘導を行う課題を作成するため、赤・青・黄のターゲットを横3列×縦10列に配置した歩行路上で、指定され た色にのみステップするマルチターゲットステッピング課題 (以下、MTS課題)をVR環境で再現した課題を開発している (以下、VR-MTS課題)。VR環境では、課題遂行中にターゲットを自由に操作することができる。そのため、遠方のターゲット位置や色に変化を加えることで視線を遠方に誘導することができる。しかし、先行研究のMTS課題は転倒リスクが高い高齢者を対象とした課題であり、健常高齢者の転倒予防課題としては負荷量が低い。そこで本研究はVR-MTS課題で採用する実験条件を決定するため、先行研究の実験条件よりも足元の負荷量が高くなるようなターゲットの配置条件を明らかにすることを目的とした。先行研究のターゲット配置条件で課題を遂行した場合よりもパフォーマンスが低下する条件を求めることで、足元の状況管理の負荷量が高まる水準を明らかにする。
【方法】
健常若齢者10名 (年齢28.5±7.31歳、女性4名)を対象とし、実環境におけるMTS課題を実施した。ターゲットの配置条件は5列から10列とした。課題パフォーマンス評価として MTS課題の遂行にかかる時間を評価した。また、ターゲットの配置数が変化しても課題の妥当性が維持されるかどうかを担保するため、ターゲットの踏み外しの有無を評価した。先行研究で採用されている5列条件と比べてパフォーマンスが変わる配置条件を特定するため、従属変数を遂行時間、独立変数を配置条件とした一元配置分散分析を行った。
【結果】
5列条件よりも8~10列条件で有意に課題遂行時間が遅延した (P<0.05)。10列条件で1名がターゲットを踏み外した。
【考察】
8.9.10列条件が先行研究の実験条件と異なる課題難易度であることが示された。しかし、10列条件ではターゲットの踏み外しが見られたため、評価課題としての妥当性が担保できないと考えられた。以上のことから、8.9列条件では足元の状況管理の負荷量を高め、健常高齢者を対象とした実験条件として適切であると考えられる。
【倫理的配慮】
本研究は、東京都立大学研究倫理委員会 (承認番号:H4-134)の承認を得て実施した。参加者には研究の趣旨と内容、得られたデータは研究目的以外に使用しないこと、個人情報の管理について説明し、同意を得た上で協力を得た。