主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに、目的】
鏡視下腱板修復術 (ARCR)は,疼痛軽減や腱板の機能不全を回復し,日常生活の質を改善させる.しかし,ARCR後の再断裂は1~3割程度に認める.再断裂に関するリスク因子は,断裂サイズや年齢,脂肪変性などが報告されている.また,術後の日常動作での無理が再断裂の因子と成りうるとの報告も多いが,日常動作の具体的な種類や動作を行う時期に関する報告は我々が渉猟し得る限り見当たらない.本研究の目的は,ARCR後の再断裂に影響を与える日常動作の種類と日常動作の獲得時期が再断裂に影響を与えるかを調査することである.
【方法】
対象は,2016年12月~2021年3月までに当院でARCRを受けた118名の内,2年間の継続調査が可能であった96名 (平均年齢66.3±8.7歳)を対象とした.除外基準は,一次修復不能な腱板断裂,肩手術の既往,その他肩関節に影響を与える疾患の併存とした. 再断裂の有無は,術後2年でMRIを実施しSugaya分類Ⅳ以上を再断裂とした.動作獲得時期を術後1,2,3,4,5,6,12, 18,24ヵ月で調査した.動作の項目は身体の前方動作 (洗顔,食事,洗髪等),overhead動作,後方動作 (後方のポケットを使用,背中を洗う),掃除,買い物,筋力関連 (重錘負荷2kg)とした.自立の有無を「はい,いいえ」で評価した. 統計処理は,再断裂の有無を2群化し各動作の比較検討を行った後,関連が認められた要因を説明変数とし,再断裂の有無を従属変数として,ロジスティック回帰分析を行った.有意水準は5%未満とした.
【結果】
再断裂は,20/96例で認められた.多重ロジスティック回帰分析の結果,背中を洗う動作 (オッズ比1.80 (95%CI=1.08 ‒ 3.61)と掃除 (オッズ比 1.21,95%CI=1.06-1.37)が有意な予測因子として選択された.
【考察】
本研究結果から,腱板再断裂に影響を与える各動作の関連では,背中を洗う動作と,掃除が有意な予測因子として抽出された. 術後は,上記動作の獲得に関しては,動作の禁止時期を検討する必要が示唆された.
【倫理的配慮】
本研究は,ヘルシンキ宣言に則って行い,得られたデータは個人情報が特定できないように配慮した.抄録の作成にあたり,所属機関の倫理審査委員会にて承認を得た.