日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: SO-02-5
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産業口述2(労働災)
ノーリフティングケア導入施設における腰痛の有訴率と痛みが出る作業場面との関連性の検討
立花 智也塩浦 宏祐栁澤 海志田辺 将也高橋 稚菜原田 亮
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抄録

【はじめに、目的】

医療・介護従事者における腰痛が問題と なっている。先行研究では不良姿勢におけるメカニカルストレスが腰痛の増悪因子であると報告されている。当介護老人保健施設では「ノーリフティングケア」を実践しており、福祉用具の導入、職員への介護技術の指導等に力を入れてきた。しかし、腰痛を有する職員は存在しており、多岐にわたる介護場面の中で、腰痛の増悪因子を調査する必要があった。そこで当施設の職員を対象に腰痛の程度と関連する介助場面を明らかにする事を目的とした。

【方法】

対象は当施設の入所棟に勤務する介護士(ケアワーカ ー・介護福祉士)、看護師の計43名とした。評価項目は年齢、性別、職種、腰痛の有無と程度(Numerical Rating Scale:NRS)、各介助動場面(起き上がり、移乗、食事、トイレ、入浴、体位変換、座り直し)に発生する痛みの程度 (NRS)を聴取した。統計解析はPearsonの相関係数を用い、有意水準は5%未満とした。

【結果】

39名 (平均年齢 43.3±13.8歳、男性 15名、女性24名 )より返信があった (有効回答率 90.6%) 。腰痛を有する者が19 名(48.7%)であり、NRSは3.6±3.1点であった。腰痛を有する者を対象に各介助場面における痛みの程度との関連は、起き上がり(r=0.49、p<0.01)、移乗 (r=0.46 、p<0.01)、食事 (r=0.38、 p<0.05)、トイレ (r=0.43、p<0.01)、入浴 (r=0.77、p<0.01)、体位変換 (r=0.44、p<0.01)、座り直し (r=0.49、p<0.01)であった。

【考察】

当施設では「ノーリフティングケア」を3年前より実践している。しかし、約半数の職員が腰痛を有しており、特に入浴場面が最も腰痛と関連していることが明らかになった。浴槽の出入りの際の負担軽減のために機械浴やリフト浴はすでに導入済みである。それゆえ、浴室外の介助場面(更衣動作や立ち上がりなど)で腰痛が発生している可能性がある。浴室外の入浴に関連する介助場面でもノーリフティングケアの考え方を活用し、介助者の身体的負担を軽減し、腰痛の軽減や重度化の予防につなげる必要があると考えられる。

【結論】

介護老人保健施設の介護士、看護師の腰痛増悪因子として入浴介助が最も関連していることが示唆された。

【倫理的配慮】

対象者には事前に書面・口頭にて説明を行い、返送をもって調査協力の同意を得られたものとした。

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