主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに、目的】
サルコペニアは加齢に伴う骨格筋減少と定義され(Rosenberg, 1989)、進行により転倒、骨折、障害、死亡などを引き起こす (Schaap et al., 2018)。また、サルコペニアは生活習慣によっても影響を受けると報告されており(Wong et al., 2008)、その中でも、特に喫煙はサルコペニアに重大な影響を与える(Locquet et al., 2021)。一方職業と生活習慣は密接に関連し、職業間で身体活動、生活習慣、生理学的特徴、および社会的要因が異なる(Tsutsumi et al., 2001)。しかし職業の中でも京都の西陣織職人の健康状態に関する報告は少ない。西陣織職人における喫煙とサルコペニアの関連性を理解することは、地域医療の観点から最も重要である。本研究の目的は、西陣織職人におけるサルコペニアと喫煙の関係を明らかにすることである。
【方法】
本研究は横断調査とした。対象は2022年4~12月に当施設の健康診断を受診した60歳から92歳までの167人とした。参加者のサルコペニアはAsian Working Group for Sarcopenia (AWGS)2019に準拠して評価された。また参加者の喫煙習慣について質問が実施された。解析は目的変数をサルコペニア、説明変数を職業、共変量を喫煙の有無、性別、年齢、退職からの年数としてロジスティック回帰分析を実施した。
【結果】
参加者における職業の内訳は西陣織職人、ブルーカラー、ホワイトカラー、その他の労働者で、それぞれ15人、71人、25人、 56人であった。ロジスティック回帰分析の結果、西陣織職人はサルコペニア有病者 (オッズ比=1.87、95% CI=0.89~2.11、 p=0.04)、喫煙 (オッズ比= 1.82、95% CI=0.72 ‒ 2.51、 p=0.01)、年齢 (オッズ比 = 0.22、95% CI=0.05 ‒ 4.18、p=0.00)が影響因子として抽出された。
【考察】
西陣織職人の健康状態についての先行研究は少ない。西陣織職人の多くは自営業であり退職を躊躇し働き続けている。また、家族経営による形態が多いことから関係者の多くは限られた学歴しか持たず、この問題の一因となっている可能性があると考えられる。Murakami et al. (2023)は個人の学歴が健康に影響を与える可能性があることを示している。西陣織職人のサルコペニアを防ぐためには、職場での戦略の促進が不可欠である。
【倫理的配慮】
本研究は、京都民医連中央病院臨床研究部の研究倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:131)。また、対象者には書面や口頭にて説明を行い、同意を得て実施した。