主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに、目的】
健康寿命を妨げ要介護に至る原因の2割以上を占める運動器障害の中でも、下肢の変形性関節症 (OA)は加齢に伴い発生・進行するとされている。一方で、股関節機能の低下においては単純に加齢のみに起因するのではなく、生体力学的負荷も関連することが示唆されている。本研究では、生体力学的負荷として歩行中の下肢荷重量に焦点を当て、下肢関節痛との関連性を明らかにすることを目的とした。 特に、片側の下肢関節に痛みを有する者の非対称的な下肢荷重に着目した。
【方法】
令和5年に開催された福島県南相馬市の体力測定会に参加した地域在住高齢者98名のうち、WOMACの回答結果にて、両側・両関節の痛み無し (無痛群)、片側膝関節に痛みを有する群 (片膝痛群)、片側股関節に痛みを有する群 (片股痛群)のいずれかに該当した者を解析の対象とした。対象者は、インソール型荷重センサloadsol® (Novel社製)が挿入された靴を履き、14mの直線路(助走距離前後2mを含む)を快適速度および最大速度で2回ずつ歩行した。荷重パラメータとして10m歩行の中央5歩を抽出し、足部3領域 (前・中・後)の平均接地時間 (Ct)、ピーク荷重 (Pf)、積分値 (FTI)を算出した。さらに、荷重パラメータの非対称性指標 (AS)とし、解析に使用した。3群間の基本属性 (性別、年齢、身長、BMI)、歩行速度及び各荷重パラメータASの比較には、一元配置分散分析またはカイ二乗検定を行った。主効果を認めた荷重パラメータASについては多重比較Tukey法を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
解析対象は72名 (平均年齢75.4±5.7歳)で、無痛群55名、片膝痛群13名、片股痛群4名に分類された。基本属性と歩行速度は 3群間で有意差を認めなかった。3群間の各荷重パラメータASの比較において、主効果を認めた項目は快適歩行時の前足部 FTIと最大歩行時の後足部Ctであった (p<0.05)。これらの多重比較の結果、どちらの項目も片股痛群のASは無痛群に比べて有意に高かった (p<0.05)。
【考察・結論】
インソール型荷重センサを用いて、軽度の股関節痛を片側に有 する高齢者の歩行において前足部の荷重量と後足部の接地時間に左右非対称性があることを明らかにすることができた。一方、片側に膝関節痛を有する者に関しては歩行中の荷重非対称性を認めなかった。本研究で得られた知見は股関節OA発症の予測 や進行の早期予防において有用であると考えられる。
【倫理的配慮】
本研究は,福島県立医科大学倫理審査委員会にて 承認された (承認番号2022-123)参加者には対面でのオプトア ウト手続きを行い,データ利用に同意の得られた者を対象とした。