日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: P - 43
会議情報

ポスター 23
インソール型とシート型の荷重計を用いての地域在住高齢者の歩行速度に関連する時間・距離因子の検討
*小林 篤典中野渡 達哉秋山 千恵理幸保 匠真加藤 唯菜星 真行浅尾 章彦堀越 裕子曽根 稔雅柴 喜崇
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】

健康寿命に関連する幾つかの要因の中で、歩行速度は重要な指標のひとつである。本研究では、従来のシート型荷重計 (FSS: Force Sensing Sheet)で測定される歩幅や重複歩距離だけでな く、新たにインソール型荷重計 (FSI:Forse Sensing Insole)で測定される足底領域ごとの接地時間を時間因子として加え、地域在住高齢者の歩行速度に関連する時間・距離因子を明らかにすることを目的とした。

【方法】

2023年に開催された福島県南相馬市の体力測定会にて参加した98名 (男性16名、女性82名、74.8±5.65歳)を対象とした。対象者はFSI (loadsol、novel社製)が挿入された靴を履き、14mの歩行路(助走距離前後2mを含む)を最大速度で歩いた。同時に歩行路の中間部に設置したFSS (ウォークWay、アニマ社製)4枚の上を通過するように指示した。FSSパラメータとして歩幅・重複歩距離・立脚時間・遊脚時間、FSIパラメータとして前・中・後足部の足底接地時間を収集した。統計解析では、右下肢のFSS・FSIパラメータおよび調整変数(年齢・身長・BMI)と歩行速度との間の、Pearsonの相関係数を算出した。さらに有意な相関のみられた項目と調整変数を独立変数、歩行速度を従属変数とする、ステップワイズ法による重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

身体特性のうち、BMIのみ歩行速度との間に有意な正の相関があった(r=0.23、p<0.05)。FSSパラメータでは全ての項目において歩行速度と相関はみられなかった。FSIパラメータでは全領域の足底接地時間の歩行速度との間に有意な負の相関があった(前r=-0.76、中r=-0.71、後r=-0.59、p<0.01)。重回帰分析では歩行速度において前足部接地時間 (β=-0.33、p<0,01)と中足部接地時間 (β=-0.325、p<0.01)および身長 (β=0.367、 p<0.01)が抽出された。

【考察・結論】

本研究結果から、前・中足部の足底接地時間の短さが歩行速度の速さに影響を与える時間因子であることが明らかになった。このことは、高齢者の歩行速度低下の一要因である腓腹筋筋力と立脚終期のプッシュオフによって生み出させる前方への推進力との関係性を示していることが示唆された。したがって、歩行速度低下の予防には、腓腹筋筋力強化や維持、プッシュオフに重きを置いたアプローチが重要であると考えられる。

【倫理的配慮】

本研究は、福島県立医科大学倫理審査委員会にて承認された (承認番号2022-123)。参加者には対面でのオプトアウト手続きを行い、データ利用に同意の得られた者を対象とした。

著者関連情報
© 2025 日本予防理学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top