日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: P - 46
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ポスター 23
通いの場を利用する前期および後期高齢者の効用値:男女別の基準範囲の検討
*井上 優加藤 剛平倉地 洋輔平上 尚吾
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抄録

【はじめに、目的】

高齢者の健康維持および生活の質の向上は,高齢化社会における重要な課題である.COVID-19の流行により様々な困難に直面したものの,関係者の工夫や努力によって実施された通いの場の効果検証は,継続的な関心事項である.

効用値は,健康状態や生活の質を評価する指標として広く用いられ,医療経済評価においても重要な役割を果たす.しかし,効用値は年齢,性別,社会的活動への参加状況などによって異なるため,それぞれの状況に応じた基準範囲を明確にすることは,精緻な健康政策の立案や介護予防プログラムの効果測定に欠かせない.

そこで本研究では,通いの場を利用する前期および後期高齢者を対象に,男女別に効用値の基準範囲を算出することを目的とした.

【方法】

本研究では地域在住高齢者を対象に無記名式アンケート調査を実施した。対象者は、社会福祉協議会または地域包括支援センターを通じて回答に同意を得た通いの場参加者とした。質問紙は基本情報、EuroQol 5-Dimensions 5-level (EQ-5D-5L)などの項目で構成した.効用値はEQ-5D-5Lの回答を基に算出した後,ブートストラップ法を用いて元サンプルから1000回の再抽出を実施した.各抽出データセットから効用値の平均値および95%信頼区間 (95% confidence interval: 95%CI)を算出した.これらの作業を前期高齢者と後期高齢者それぞれで男女別に実施し基準範囲を求めた.

【結果】

アンケート調査の結果、計199名 (76.4±7.3歳、女性 152名)の回答を得た.うち前期高齢者75名 (69.6±6.0歳、女 性59名),後期高齢者124名 (80.6±4.2歳、女性93名)であった.前期高齢者の効用値は,男性:0.907 (95%CI:0.780-1.000),女性:0.899 (95%CI:0.629-1.000)であった.後期高齢者では男性:0.859 (95%CI:0.377-1.000),女性:0.865 (95%CI: 0.591-1.000)であった.

【考察】

解析の結果,前期高齢者および後期高齢者の効用値の基準範囲が男女別に得られた.本研究の対象者は特定の地域に限定され,ブートストラップ法によって得た結果である.異なる地域で分布が異なる場合は推定値が異なるため,一般化には注意が必要である.

【倫理的配慮】

本研究の目的と、無記名式アンケートで個人情報を含まず,不参加となっても不利益を被らないことを書面を用いて説明し,同意を得たうえで実施した.

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