日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 16
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口述 3
肝動脈化学塞栓術を施行した肝細胞癌患者に対する入院中の運動療法がフレイルに及ぼす影響
*神谷 俊次土橋 仁中野 暖戸次 鎮宗佐野 有哉天野 恵介川口 巧松瀬 博夫
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抄録

【はじめに、目的】

フレイルは肝疾患患者の予後に関わる.我々は運動療法が肝細胞癌 (HCC)患者のサルコペニアを改善させることを報告してきたが、フレイルの改善効果は不明である.本研究の目的は,肝動脈化学塞栓術 (TACE)を施行した入院HCC患者に対する運動療法がフレイルに及ぼす影響を検討することである.

【方法】

本研究は、多施設共同後ろ向き観察研究である。TACEを受けたHCC患者165名のうち、年齢、性別、BMIを共変量とした傾向スコアマッチングにて調整したExercise群58名とNon-exercise群 58名を解析対象とした。レジスタンストレーニングと持久力トレーニングを組み合わせた運動療法を20- 40分/日、週5回実施した。フレイルはLiver Frailty Index (LFI)にて評価した。入院時と退院時のLFIの差をΔLFIとし、両群を比較した。さらに、LFI改善に関わる因子をロジスティック回帰分析にて検討した。

【結果】

Exercise群のΔLFIはNon-exercise群と比較して有意に改善していた (-0.23 vs. -0.03, P=0.0067).ロジスティック回帰分析では、Exercise (OR 2.52, 95%CI 1.11-5.91, P=0.0268)、女性 (OR 3.08, 95%CI 1.28-7.99, P=0.0328)、およびChild-Pugh class A (OR 3.34, 95%CI 1.21-9.77, P=0.0193)がLFI改善の独立因子であった.Exercise群 において、転倒や肝予備能悪化などの有害事象は認めなかった。

【考察・結論】

本研究により、運動療法はTACEを施行したHCC患者のLFIを改善させることが明らかとなった。既報にて、Exercise群はΔLFIを有意に改善させなかったことが報告されているが、その運動内容は、ビデオを用いた在宅プログラムかつレジスタンストレーニングのみであった。本研究が、監視下でレジスタンストレーニングと持久力トレーニングを組み合わせたことがΔLFI改善の一因と考える。さらに、ロジスティック回帰分析の結果から、肝予備能が保たれている段階から運動療法を行うことが効果的なフレイル予防につながる可能性が示唆された。

【倫理的配慮】

本研究は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守した。研究を実施するにあたり、久留米大学臨床研究センターの承認を得た (承認番号19098)。本研究は後ろ向き観察研究であり、対象者から直接文書による同意取得は行わなかったが、代わりに研究内容をホームページ上に公開し、対象者が今後の診療等に不利益が生じることなく研究参加を拒否できる機会を保障した。

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