主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに、目的】
サルコペニアは退院後の再入院に相関することが示されている。しかし、先行研究では急性期病棟入院患者や地域高齢者が対象 であり、回復期リハビリテーション(以下:回リハ)病棟入院患者 を対象にしたものは少ない。
本研究の目的は、回リハ病棟入院患者においてサルコペニアの 合併が退院後の再入院を予測するかを明らかにすることである。
【方法】
対象は京都民医連あすかい病院の回リハ病棟に2020年3月1日~2021年8月31日の間に入院し、自宅退院した279名とした。対象はサルコペニアの診断が可能かつ、退院後の追跡が可能なものとした。サルコペニアの定義は、2019 年アジアサルコペ ニアワーキンググループ(AWGS2019)の基準を採用した。再入院は退院日から再入院までの日数を計算し、観察期間は2020 年3月1日~2022年12月31日までとした。期間内に再入院した患者を「再入院群」、それ以外を「非再入院群」とした。再入院に対するサルコペニアの影響は、カプラン・マイヤー法にて推定し、単変量解析にはログランク検定、多変量解析にはCox比例ハザードモデルを採用した。解析には RStudioを採用した。
【結果】
合計131名が選出された。非再入院群は119名、男性45人 (38%)、女性74人(62%)、再入院群は12名、男性8人(67%)、女性4人(33%)であった。非再入院群では60人(50%)がサルコペニアであり、再入院群では7人(58%)がサルコペニアであった。 750日後の生存率 (再入院していない割合)は、サルコペニア群では0.87、サルコペニアなし群では0.93であった。ログランク検定より p 値は 0.63 であった。
再入院リスクのハザード比は、サルコペニア(HR 1.74[95%CI:0.5~5.83])と男性(HR 3.00 [95%CI:0.18~11.1])で再入院リスクの増加と関連があった。整形外科疾患に基づく脳血管疾患は(HR 1.79[95%CI:0.49~6.52])であった。
【考察】
統計的に有意ではないが、サルコペニアは再入院リスクの増加 と関連していた。先行研究(Yang,2017)(HR1.81[95%CI:1.17~ 2.80])と比較すると点推定値での顕著な差はなくサルコペニア は、回リハ病棟退院後の再入院の予測因子となる可能性がある。また、回リハ病棟入院患者のサルコペニア有病率が50%以上である(Yoshimura,2017)ことや、入院中のサルコペニアは日常生活動作(ADL)の回復を阻害する(Yoshimura,2019)と言われていることから、サルコペニアは臨床的判断及び介入措置において考慮すべきと考える。
【倫理的配慮】
京都民医連中央病院の倫理委員会より承認を得た (ID:137)
本研究は、新たに試料・情報を取得することはなく、既存情報のみを用いて実施する研究であるため、研究対象者から文書または口頭による同意は得ない。研究についての情報を研究対象者に公開 (病院内に掲示又は病院ホームページへの掲載)し、研究が実施されることについて、研究対象者が拒否できる機会を保障した。