日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 18
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口述 3
胃がん患者術後1年の身体機能およびQOLにサルコペニアが与える影響
*高山 拓也呂 隆徳村岡 法彦大谷 将秀横尾 英樹大田 哲生
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抄録

【はじめに、目的】

胃がん患者においてサルコペニアは予後不良因子とされているが,術前のサルコペニアが術後長期の身体機能・QOLにどのような影響を与えるかはわかっていない.本研究では胃がん患者における術前サルコペニアの有無が術後長期の身体機能およびQOLにどのような影響を与えるかを調査した.

【方法】

2018年10月~2023年3月までに当院消化管外科で根治目的の手術が施行された胃がん患者のうち,理学療法が処方され,術前と術後1年に理学療法評価を実施し,データ欠損のなかった30例を調査した.調査項目は年齢,性別,身長,体重,がん進行度,既往歴,ALB値,手術情報,術前・術後1年の身体機能 (握力,歩行速度,6分間歩行距離:6MD)・QOL (EORTC-QLQ C30使用)・活動量 (国際標準化身体機能評価表Short版使用)で,サルコペニア該当群(サルコ群)とサルコペニア非該当群(非サルコ群)に分けて比較した. 解析はMann-WhitneyU検定,χ2検定を用いた.また術前・術後それぞれで6MDが400m以上の者 (6MD維持)と400m未満の者 (6MD低値),総身体活動量が600Mets・分/週以上の者 (中身体活動)と600Mets・分/週未満の者 (低身体活動)に分け,サルコペニアとの関連を調べた.

【結果】

サルコ群は10例,非サルコ群は20例であった.サルコ群は非サルコ群と比較して年齢が高く低体重であった(p<0.05).その他の基本情報に差はなかった.術前の身体機能はサルコ群で握力・6 MDが低く(p<0.05),術後1年もサルコ群の6MDは低かった (p<0.05).QOL・総身体活動量は術前・術後1年ともに2群間で 差はなかった.術前の6MD低値とサルコペニアは関連していなかったが,術後1年の6MD低値はサルコペニアと有意に関連していた(p<0.05).低身体活動とサルコペニアの関係も6MDと同様であった(p<0.05).

【考察・結論】

サルコ群で術後に1年6MD低値の者が増加した原因として,サルコ群では低身体活動群の者も増加しており,手術後に活動量が低下していたことが考えられる.サルコペニアを有する者は術後の運動耐容能・活動量が低下するリスクが高いため,退院時に本人の生活に即した運動指導やメニューの提示,定期的な運動機会を提供する必要があると考える.

【倫理的配慮】

本研究は旭川医科大学倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:17259).

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