日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 19
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口述 4
健康経営と労働生産性向上への取り組み
―理学療法士だからできること―
*北澤 岬
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抄録

【目的】

近年,企業における健康経営が注目されている.経済産業省が 行っている健康経営優良法人認定制度では,大規模法人に関して「業務パフォーマンス指標の開示」項目が新たに追加された.このことからも生産性低下の防止は企業の課題となることが予測される.今回,健康経営の重要性に着目し,プレゼンティーズム(健康問題による出勤時の生産性低下)の改善から生産性の 向上に向けた取り組みを行ったのでここに報告する.

【方法】

当院の在宅(訪問・通所)リハビリテーション課に所属している PT・OT・STを対象に,集団ストレッチがプレゼンティーズムに与える影響を調査した.対象者は男性13名と女性9名の合計 22名である.期間は3カ月間,毎朝の朝礼時に約3分間の集団ストレッチを実施した.事前に,対象者に対してアンケート調査を行い,東大一項目版を用いてプレゼンティーズムの程度を測定した.さらに,実施1カ月ごとに,効果を評価するためにアンケート調査を行い,プレゼンティーズムの程度の変化を追跡した.以上の手順により,朝礼時の集団ストレッチがプレゼンティーズムに与える影響を定量的に評価した.

【結果】

当院の在宅リハビリテーション課のプレゼンティーズムは,実施前のアンケートにて平均で22.2%であった.実施後のアンケート結果を分析すると,1カ月後ではプレゼンティーズムが平均で14.3%,2カ月後は13.9%,3カ月後は14.0%であった.朝礼時のストレッチを導入後,プレゼンティーズムが有意に改善 (p<0.05)を示す結果となった.期間が長くなるにつれての変化は観察されなかったものの,導入して1カ月といった期間で改善傾向が確認された.

【考察】

古井ら (2018)らは,企業経営の視点では職場の労働生産性の損失コストを抑えるために,プレゼンティーイズムの改善につながる取組が重要であると指摘している.経済産業省(2016)の調査結果によれば,大企業におけるプレゼンティーズムの平均割合は15.1%と報告されている.当院の在宅リハビリテーション課では,これに比べて損失割合が高い傾向が見られていた.今回,朝礼時に集団ストレッチを実施したことで,日本の平均を下回る割合に改善され,労働生産性の向上が見込まれた.経済産業省の報告では,ストレッチや体操がプレゼンティーズムの改善につながることを示唆しており,朝礼時に集団ストレッチを実施したことが,プレゼンティーズムの改善に寄与したと考える.

【倫理的配慮】

アンケート内にデータの公表の可否について回答を得る質問を設け,同意を得たデータのみを使用した.

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