日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 34
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口述 6
地域在住高齢者における社会的孤立と老年症候群のリスク要因との関連
*岡田 はな浅尾 章彦星 真行木村 夏実中野渡 達哉堀越 裕子安藤 雅峻植田 拓也曽根 稔雅柴 喜崇
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抄録

【はじめに、目的】

社会的孤立は様々な健康状態と関連し, 死亡率を上昇させることが明らかになっている (Nakagomi A, 2023)。日本では独居高齢者が増加すると予想されており (社人研, 2024)、これに伴い社会的孤立を経験する高齢者も増加すると考えられる。社会的孤立は老年症候群を引き起こす一つの原因である。基本チェックリストの7領域はそれぞれ老年症候群のリスク要因であるが、基本チェックリストを用いてリスク要因と社会的孤立との関連を検討したものは見当たらない。そこで本研究は、社会的孤立と老年症候群のリスク要因との関連を検討することを目的とした。

【方法】

福島県在住の65歳以上の174名を対象とした横断研究である。 調査項目は、年齢、性別、既往歴の有無、主観的健康観、社会参加の有無、基本チェックリスト、日本語版 Lubben Social Network Scale 短縮版 (LSNS-6)、K6質問票 (K6)、Japanese version of Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J)である。 LSNS-6合計得点が12点未満を社会的孤立有とした (栗本ら, 2011)。基本チェックリストの下位項目 (日常生活関連動作、 運動機能、栄養、口腔機能、閉じこもり、認知機能、うつ)の各得点を算出した。年齢、性別、既往歴の有無、主観的健康観、社会参加の有無を調整変数、社会的孤立の有無を独立変数、従属変数をリスク要因の各得点とし重回帰分析を行った。

【結果】

MoCA-J合計得点が25点以下かつK6合計得点が5点以上の者を除外、解析対象者157名とし、社会的孤立有は13名 (8.3%)であった。重回帰分析の結果、「日常生活関連動作」、「認知機能」において社会的孤立有 (B=0.70、p<0.01)、 (B=-0.41、p<0.05)が抽出された。

【考察】

社会的孤立有と「日常生活関連動作」が低いこと、「認知機能」が高いことと関連した。どちらも人間関係が希薄であることが要因であると考えられた。「日常生活関連動作」ではLSNS-6と類似した人間関係に関する質問に該当したことが、「認知機能」では社会的孤立を経験している者は他者による社会的支援を受けずに生活を送っていることが考えられた。

【結論】

社会的孤立を経験している高齢者の対人関係の改善、特に友人における交流の機会を増やし、健康問題やリスク要因に繋がらないようにする必要があると考えた。しかし社会的孤立を経験している高齢者の孤立した背景を考慮した支援を提供するために縦断的な追及が必要であると考えた。

【倫理的配慮】

本研究は、福島県立医科大学倫理審査委員会に て承認された (承認番号2022-123)。参加者にはオプトアウト 手続きを行い、データ利用否認の申し出がない者を対象とした。

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