主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに】
一般的に60歳を超えると心機能は低下していく事が先行研究で分かっており,これを予防・改善するのは健康寿命延伸に大切である.
【目的】
左室の収縮性変化を体操前後で計測し,左室収縮性の改善について検証する事である.
【方法】
1回20分間の体操を週5回以上実施できた,地域在住の中高齢者26名 (男性6名,平均年齢69±8歳)の3か月間の体操前後で,頸動脈で得られる心収縮性指標W1を計測した.体操内容は5分のストレッチと7分30秒のレジスタンストレーニング,7分30秒の有酸素運動で構成されている.W1とは,心臓 と血管の干渉された血行力学的指標で,血圧をP,血管直径変化をUとすると,WI = (dP/dt) (dU/dt) で算出される波形の収縮期初期のピーク値である.心臓カテーテルで計測される心収縮性指標Peak dP/dtと強い相関がある.頸動脈エコーで計測できるので非侵襲的に計測できる.体操後の変化をWilcoxon signed-rank testで検定し,W1の変化率に関与する強因子を重回帰分析で検出した.
【結果】
W1は8884 ± 4013から 7088 ± 3358 mmHg*m/s3 (p < 0.001)と体操前の82%に低下した.W1変化率に影響する因子を他の頸動脈エコー指標と血圧,心拍数の変化率でW1との単相関を見ると,心拍数,R-F (前駆出時間に相当),Nega (下肢からの反射波),最大血流速度,スティッフネスパラメータβ (血管弾性指標)が挙げられた.これらを説明変数として重回帰分析をかけると,重相関係数R = 0.73, 決定係数R2=0.54でβと最大血流速度が残った.
【考察】
体操によって生じた安静時の心収縮性指標W1低下は,血管の弾性改善により後負荷が下がり,血流速度が減少したのが大きな要因と考えられた.高齢者の心拍出量の低下には,左室の拍出に対する大動脈のWindkessel機能が大動脈硬化のために低下している事が関与していると言われているが,本研究はこの現象を捉え,改善する体操の実践についての報告となる.
【結論】
1回20分の体操を週5回以上,3か月間継続する事で,心収縮性指標W1が下がり,安静時心収縮性のエネルギー効率の向上が示唆された.その原因となったのは,血管の弾性改善により後負荷が下がったことが大きな理由と考えられた.
【倫理的配慮】
研究計画書には以下の内容について記載するとともにこれを基に被験者への説明を行い,同意文書への記名をもって同意としている.
・研究の概要・予想される臨床上の利益及び不利益・研究協力の任意性・研究協力の撤回の自由・個人情報、研究データの取り扱いについて・研究成果の公表・研究の資金源・費用の負担・謝礼の有無・守らなければならない事項・研究者の連絡先・問い合わせ先等