主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに、目的】
就労やボランティアなどのproductive activity はwell-beingの改善に寄与すると報告されている。近年、well-beingは認知症発症に対する保護因子となることも報告されており修正すべき重要な因子である。しかし、認知機能が低下したハイリスク者においてもproductive activityがwell-beingの改善に寄与するかは不明である。そこで、本研究はMild Cognitive Impairment (MCI)を有する高齢者におけるproductive activityとwell-beingの関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者はMCIを有する地域在住高齢者762名 (平均年齢74.7± 5.5歳;女性44.6%)とした。認知機能評価は、記憶、注意、実 行機能、処理速度で構成される多領域認知機能テストを実施し、 1つ以上の認知領域で、学歴・年齢で調整した基準値を下回った場合をMCIと定義した。Well-beingは生活満足度の指標であるLife Satisfaction Scale(LSS)を用いて評価した。LSSは13項目の質問を4件法 (1点:まったく満足してない~4点:とても満足している)で回答する指標である。得点が高いほど生活満足度が高いことを示す。LSSは合計点39点をカットオフ値として二値化した。本研究では、1)有償労働、2)ボランティア、3)子供の世話、4)他者の支援をproductive activityとして定義し、過去1年間における従事を聴取した。LSSを従属変数、 productive activityへの従事を独立変数としてwell-beingに関連するproductive activityを二項ロジスティック回帰分析にて検討した。共変量は年齢、性別、病歴、独居、世帯収入、教育歴とした。
【結果】
MCI高齢者におけるLSS≧39点の割合は、45.7%であった。各 productive activity のLSSに対するオッズ比 (Odds Ratio: OR)と 95%信頼区間 (Confidence interval: CI)は、有償労働 (OR:0.80、 95%CI:0.55-1.15)、ボランティア (OR:1.75、95%CI: 1.26-2.44)、子どもの世話 (OR:1.48、95%CI:1.08-2.03)、他者の支援 (OR:1.06、95%CI:0.73-1.53)であり、ボランティアと子どもの世話がLSSと有意な関連を認めた。
【考察】
ボランティアと子供の世話がMCI高齢者の生活満足度にポジティブな影響を及ぼす可能性があることが示唆された。MCI高齢者の社会参加を促す際にはボランティアや子どもの世話の実施を考慮することでMCI高齢者のwell-being改善に寄与する可能性がある。今後は縦断的な検証を行い、関係性を明らかにする必要がある。
【倫理的配慮】
国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認 (承認番号1440-5)を得て実施した。