主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに、目的】
情報通信技術 (ICT)を利用しない高齢者はフレイルのリスクが高いことが報告されており、ICTの利用を通じた健康づくりが注目されている。一方で社会的孤立状態にある高齢者は健康情報へのアクセスが制限されやすいためフレイルになりやすいことが知られている。しかし、社会的孤立状態にある高齢者においてICTの利用がフレイルのリスクを抑えられるかについては十分に検討されていない。そこで本研究では、地域在住高齢者においてICT利用と社会的孤立の組み合わせとフレイルの発生との関連を縦断的に調査することを目的とした。
【方法】
地域高齢者を対象とした包括的健康調査「板橋お達者健診 2011コホート」の2015年または2016年調査のいずれかに参加し、ベースライン時にフレイルでなく、かつ2023年まで毎年実施された追跡調査に参加した782名(女性:59.1%、平均年齢:72.5歳)を解析対象とした。フレイルは基本チェックリスト (KCL)で評価した。ICTの利用はJST版活動能力指標の「新機器利用」の4つの項目で評価し、4つ全て使用できると回答した場合を満点群、それ以外を非満点群と定義した。社会的孤立は 6項目のLubben social network scale短縮版で評価し、12点未満を社会的孤立と定義した。そしてICT利用と社会的孤立の組み合わせから対象者を4群に分類した。アウトカムはフレイルの発生とし、追跡調査でKCLが8点以上になった場合をフレイルと判定した。社会的孤立と情報通信技術の利用の組み合わせとフレイルの発生との関連ではCox比例ハザード回帰分析を行った。
【結果】
追跡期間中 (中央値:84カ月)に225名 (28.8%)でフレイルが認められた。非社会的孤立×満点群を参照群とした場合、社会的孤立の有無に関わらず、ICT利用の非満点群は有意にフレイルの発生と関連していた(非社会的孤立×非満点群;ハザード比 (HR):1.49、95%信頼区間(CI):1.04-2.14、社会的孤立×非満点群;HR:1.95、95%CI:1.32-2.89)。一方で、社会的孤立状態にあっても、ICT満点群は有意な関連を示さなかった(社会的孤立×満点群;HR:1.33、95%CI:0.87-2.04)。
【考察】
ICTの非利用は社会的孤立の有無に関わらずフレイルの発生と関連していた。しかし、社会的孤立状態にあってもICTが利用できていた高齢者は関連を示さなかったことから、社会的孤立状態にある高齢者に対してICTの利用がフレイル対策に有用である可能性が示唆された。
【倫理的配慮】
本研究は,東京都健康長寿医療センター研究所の倫理審査委員会の承認を得て実施したものである (承認番号迅7, 迅18).また,本研究の対象者には書面にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.