日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: P - 22
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ポスター 16
運動器疾患を抱えた高齢入院患者における社会的フレイルと心身機能との関連性
*石田 咲瑛平瀬 達哉
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抄録

【はじめに、目的】

地域在住高齢者における社会的フレイルは要介護発生のリスクファクターであることから,その対策は重要である.一方,運動器疾患を抱えた高齢入院患者は急増しており,このような高齢者では退院後に外出機会や身体活動量が低下することが明らかとなっている.したがって,運動器疾患を抱えた高齢入院患者の社会的フレイル対策も重要であると考えられるが,このことに着目した先行研究は皆無である.本研究では,運動器疾患を抱えた高齢入院患者の社会的フレイルと心身機能との関連性を明らかにすることを目的とした.

【方法】

対象は,当院の回復期および地域包括ケア病棟に運動器疾患を 抱えて入院した60歳以上の患者129名 (男性31名,女性98名,平均79.4歳)とした.社会的フレイルは,先行研究を参考に5項目 (独居,外出頻度の減少,友人の家への訪問,役に立ってい る,毎日誰かと会話)から構成された質問紙を用いて入院時に評価し,0~1項目に該当した者を非社会的フレイル群,2項目以上に該当した者を社会的フレイル群と定義した.評価項目は,痛みの有無,運動機能 (膝伸展筋力,5回椅子起立時間,TUG, 10m歩行テスト),認知機能,心理面 (運動自己効力感,うつ徴候),栄養状態,睡眠状況,身体活動量とし,これらを退院時に評価した.分析は,上記した評価項目を非社会的フレイル群と社会的フレイル群で比較し,その後,従属変数に社会的フレイルの有無,独立変数に群間比較にて有意差を認めた項目を投入したロジスティック回帰分析を行った.

【結果】

対象者の内,社会的フレイル群は71名 (54.2%)であった.群間比較の結果,社会的フレイル群は非社会的フレイル群に比べて,運動自己効力感得点が有意に低値であり,うつ徴候得点,5回 椅子起立時間,TUGが有意に高値であった.年齢,性別,BMI,服薬数で調整したロジスティック回帰分析の結果,運動自己効力感の低下とうつ徴候が社会的フレイルと有意な関連を認めた.

【結論】

運動器疾患を抱えた高齢入院患者の半数以上が入院時に社会的フレイルを認めており,その対策は重要であることが明らかとなった.そして,運動自己効力感の低さとうつ徴候が社会的フレイルに影響をおよぼすことが明らかとなったことから,これらに対する評価介入が運動器疾患を抱えた高齢入院患者の社会的フレイル対策として重要である可能性が示唆された.

【倫理的配慮】

【倫理的配慮、説明と同意】

対象者にはヘルシンキ宣言の趣旨に沿い本研究の主旨及び目的について口頭と書面にて説明し同意を得た.具体的には,全ての対象者に対し自由意思による参加であること,研究参加を拒否した場合でもなんら不利益を被らないこと等を事前に説明した.データは全て匿名・コード化し,保管庫にて格納し施錠した.なお,本研究は湘南慶育病院倫理審査委員会の承認 (承甲 22-017)を得て実施した.

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