日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第42回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 42_1-P-C-6
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一般演題(ポスター)
医療情報データベースを用いた2型糖尿病治療薬に対するメトホルミンの併用効果
*小野 良介尾上 知佳長谷川 千尋藤 秀人松本 宜明辻 泰弘
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抄録

【目的】欧米諸国の2型糖尿病治療ガイドラインでは、第一選択薬としてメトホルミンが推奨されている。一方で、日本の糖尿病診療ガイドラインでは、第一選択薬を特に指定せず、病態に応じて血糖降下薬を選択することが推奨されている。日本で最も普及している2型糖尿病治療における第一選択薬はDPP-4阻害薬であり、メトホルミンがそれに続く。メトホルミンは他の糖尿病治療薬との併用もガイドラインにて提案されており、DPP-4阻害薬とメトホルミンの併用療法による早期介入は、メトホルミン単剤療法と比較して長期的利益をもたらす報告がある。一方、メトホルミンに他の血糖降下薬を併用した際の血糖降下作用は単剤治療のときと比較して、拮抗、相加もしくは相乗作用を示すのか明確ではない。そこで、メトホルミンが他剤の有効性に与える相互作用の程度を医療情報データから包括的に検証した。【方法】2型糖尿病の患者データおよび医療情報はMDV株式会社の医療情報データベースを利用した。はじめに、2型糖尿病(ICD10:E11-E14)かつ臨床検査値を保有している患者を一次抽出した。次に、糖尿病治療薬が処方かつHbA1cの検査値を保有している患者を二次抽出し本研究の解析対象とした。各薬剤クラスにおいて単剤治療が実施された単剤コホート、メトホルミン治療に作用機序が異なるクラスを併用追加したメトホルミン併用コホートの2つのコホートを設定し、単剤療法とメトホルミン併用療法の治療効果としてHbA1cの変化量を比較した。【結果・考察】HbA1cのベースラインからの変化量の推移を薬剤クラスごとに両コホート間で比較すると、メトホルミン併用コホートのHbA1cの変化量は単剤コホートのHbA1cの変化量と比べ概ね同程度であった。また、HbA1cの変化量の両コホート間の差をHbA1cベースライン値を共変量として共分散分析した結果、両コホート間で顕著な差は認められなかった。このことは、メトホルミンに他剤を併用した場合、HbA1cの低下効果は相加作用の関係であることが示唆された。【結論】メトホルミンに他の作用機序の薬剤を併用する場合、どの程度の血糖低下効果が期待できるか各薬剤の添付文書から推察することができる。本研究はメトホルミン併用時の適切な治療選択に寄与できる可能性が示唆された。

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