主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第42回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 42
開催地: 仙台
開催日: 2021/12/09 - 2021/12/11
【背景・目的】母集団薬物動態(PPK)解析は多数の患者から得られた薬物濃度や臨床評価指標を対象に薬物動態パラメータの母集団平均とその変動、パラメータに影響を与える因子を同時解析できる有用な手法である。免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブのPPK解析は国際共同第I-III相試験(KEYNOTE)において収集されたデータより実施され、2-10mg/kg Q3W投与においてベースラインクリアランス(CL)と全生存期間との関連が示唆されている。しかし現在設定されている基本用量(1回200mg Q3W)においてはKEYNOTE-024のみとデータ数が少なく、日本人患者集団に関するデータはさらに少ない。そこで本研究ではペムブロリズマブ200mg Q3W投与の日本人非小細胞肺がん(NSCLC)患者集団のペムブロリズマブ投与前とトラフ値付近の採血ポイント収集によりPPK解析を実施した。【方法】2016年8月-2019年6月にNSCLC診断後ペムブロリズマブ200mg Q3W投与された日本人患者集団を研究対象とした。ペムブロリズマブ血清中濃度は質量分析装置により測定され、PPK解析ソフトウェアはPhoenix NLMEを使用した。【結果・考察】75名の患者から268ポイントのデータが収集された。Stepwise法により体重、血清アルブミン値とリンパ球数が共変量として選択された。本解析において投与後はトラフ付近のデータ採集となったため分布相のデータなしに単純な1コンパートメントを用いてPPK解析を実施した。結果、実測値と仮想データ分布範囲に十分な類似性が認められ、日本人ペムブロリズマブ200mg Q3W投与NSCLC患者集団におけるPPKプロファイルを作成できた。PPKモデルの妥当性は各種診断プロットにより検証し、適確性はVisual Predictive Checkとブートストラップにより評価された。本研究ではペムブロリズマブベースラインCLと全生存期間との関連は見出されなかった。また、定常状態におけるCLの母集団平均値が既存研究で導かれた値より低く、日本人患者への200mg Q3W投与は高暴露となる可能性が示唆された。本薬剤は近年400mg Q6W投与が認可され日本人において過量投与となる可能性がある。そのため本研究のような日本人PPK解析情報の蓄積が必要と考えられる。