主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第42回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 42
開催地: 仙台
開催日: 2021/12/09 - 2021/12/11
【目的】本邦では、新医薬品が製造販売承認申請された際に、治験が被験者の人権、安全、福祉の向上を図り、GCPや治験実施計画を遵守して実施されていたこと、科学的な質と成績の信頼性が確保されていたことを確認するために、医薬品医療器総合機構(PMDA)が、GCP実地調査を実施し、原資料を確認する。GCP実地調査の結果、「GCPに不適合な事項」、「改善すべき事項」が認められた場合、当該事項は、治験依頼者/申請者及びGCP調査が行われた治験実施医療機関の長に通知される。「GCPに不適合な事項」とは、調査対象承認申請資料がGCPに従って収集、作成されたものであることが確認できず、当該資料の全部又は一部を承認審査の対象から除外するなどの措置が必要と判断した事例であり、「改善すべき事項」は、GCPからの逸脱ではあるものの被験者の安全は保たれており、試験全体の評価に影響しないと判断された事例で、原則として自主的に改善を求める事項である。これらのGCP実地調査の結果は、PMDAが作成する審査報告書に記載され、公開されている。我々は、GCP実地調査の評価結果を基に、治験実施医療機関におけるGCP遵守状況を検討するとともに、指摘された不適合事項の傾向を検討することにより、治験を実施する際に、注意すべき事項を明らかにすることを目的として、治験実施医療機関におけるGCP遵守状況を検討した。【方法】本邦において、2006年から2020年に承認された新医薬品1,634品目を対象に、PMDAのホームページで公開されている審査報告書におけるGCP実地調査の評価結果を調査した。GCP実地調査の結果、「GCPに不適合な事項」、「改善すべき事項」の記載を抽出し、集計した。【結果・考察】「GCPに不適合な事項」が認められた新医薬品は、51品目あった。GCP不適合と判断された原因のうち、「記録の保存」が最も多かった。それ以外では、「被験者の選定」、「治験実施計画書からの逸脱」、「被験者の同意」が多かった。【結論】「記録の保存」及び「被験者の選定」が原因でGCP不適合と判断されることが多いことを踏まえ、医療機関における記録の保管に関する規定の確認、登録された被験者が選択・除外基準を満たしていることを重点的に確認すること等が重要であることが示唆された。