日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第42回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 42_1-P-G-4
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一般演題(ポスター)
日米における抗悪性腫瘍剤のドラッグ・ラグの検討
*菅野 仁士松山 琴音
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抄録

【目的】ドラッグ・ラグとは、海外で既に承認されている薬が日本国内で承認されるまでに、長い年月を要することであり、日本で薬が承認されるまでの期間中、日本で受けられる医療レベルがその他の先進国と比べて低下することにも繋がりうる重大な問題である。ドラッグ・ラグを解消するための施策として、新薬の開発から承認申請に至るまで、海外と日本で協力しあって同時に行うことを目的とした国際共同治験の促進、審査期間の短縮を図るために独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査委員の増員がなされてきた。今回、特にがん領域に着目し、ドラッグ・ラグが解消されているか検討した。【方法】2014年4月1日から2021年3月31日までの間に新有効成分含有医薬品(NDA)として日本で承認された抗悪性腫瘍剤72剤を対象とした。PMDAのウェブサイト(http://www.pmda.go.jp/)、FDAのウェブサイト(http://www.fda.gov/)等から、日本及び米国における申請日、審査期間、承認日、希少疾病用医薬品の指定、優先審査の該当、先駆け審査制度の対象及び条件付き早期承認制度の対象の有無について収集した。日米間の承認申請時期の差(開発ラグ)、及び審査期間の差(審査ラグ)を算出した。なお、日本においてのみ承認された抗悪性腫瘍剤について、開発ラグ及び審査ラグはいずれも0日とした。【結果・考察 】日本で承認された抗悪性腫瘍剤72剤のうち、2014年4月~2017年3月(前期)及び2017年4月~2021年3月(後期)に承認された抗悪性腫瘍剤はそれぞれ45剤及び27剤であった。米国で承認された抗悪性腫瘍剤は66剤(前期44剤、後期22剤)であった。開発ラグ(中央値)は前期836日、後期169日(以下、同順)、審査ラグ(中央値)は90日、0日、ドラッグ・ラグ(中央値)は961日、205日であった。また、後期に承認された27剤のうち、先駆け審査制度の対象であった5剤を除いた22剤における開発ラグ(中央値)は324.5日、審査ラグ(中央値)は56日、ドラッグ・ラグ(中央値)は372.5日であった。【結論】先駆け審査制度等の導入により世界初の承認となる抗悪性腫瘍剤が増えることで、抗悪性腫瘍剤のドラッグ・ラグの短縮がみられた。しかしながら、当該制度の対象とならない抗悪性腫瘍剤においては約半年間のドラッグ・ラグが生じている。

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