日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第42回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 42_1-S17-4
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シンポジウム
精神神経疾患の精密医療を実現するための臨床薬理学的検討抗てんかん薬の薬物動態解析の観点から
*金子 哲也鬼木 健太郎古郡 規雄石津 棟暎猿渡 淳二
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抄録

薬物動態(PK)並びにPK-薬力学(PD)解析に基づく薬物投与設計は、精密医療の実現に向けた重要なツールとなりうる。近年、我が国では精神神経疾患に対する医療機能強化が推進されているが、その治療薬は体内動態の個人差が大きく、治療効果や副作用発現の個人差を引き起こす重要な要因となっている。そのため、薬物投与量の設定にはtry and errorが繰り返され、寛解までに長期間を要している他、多彩な副作用の発現を十分に予測することは現状では困難である。

これまで我々は、抗てんかん薬や抗うつ薬、抗精神病薬といった様々な精神神経疾患治療薬のPK-PD解析を進めてきた。その中で、成人焦点発作の第一選択薬である抗てんかん薬ゾニサミド(ZNS)について、母集団PKモデルを構築し、カルバマゼピン等の併用薬の有無で2倍弱の投与量調整により、適切に治療血中濃度域(10-30 μg/mL)に到達できることを示した。加えて、本モデルに基づくPK-PD解析をさらに発展させ、PK情報及び他の患者情報からZNS投与後の有効性・安全性を予測する決定木等を、機械学習により開発を試みている。

また、難治性てんかんの切り札の一つである、クロバザム(CLB)に関する検討では、CLB同様に活性を有する代謝物N-desmethyl CLBを同時に組み込んだ母集団PK-PDモデルを構築した。その結果、それぞれの血中薬物濃度推移が、cytochrome P450(CYP)2C19やP450 oxidoreductaseといった薬物動態関連遺伝子の多型情報で予測でき、同時に、てんかん発作抑制効果や用量依存性副作用(眠気、流涎等)との関係から、最適投与量のみならず、個々に適した治療血中濃度域を提案できる可能性を示唆した。

さらに、全般発作の第一選択薬であるバルプロ酸(VPA)については、PK-PD解析のみならず、その長期投与により発現する体重増加を予測する母集団PDモデルの構築を試みた。本体重変動予測モデルにより、体重増加のリスク因子を持つ患者を事前に判断することが可能となり、VPAに誘発される体重増加の予防や服薬アドヒアランスの向上のみならず、小児患者の体重変動に基づく投与量調整にも寄与できる可能性を示した。

以上のように、本発表では、PKおよびPDの観点から、精神神経疾患の精密医療を実現するための臨床薬理学の臨床応用について、抗てんかん薬に関する我々の最新の知見を提示しながら紹介する予定である。

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