日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_1-C-O01-5
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一般演題 口演
高カリウム血症合併心不全患者におけるガイドライン推奨用量以下の薬剤使用と心不全入院の関連性について
*神田 英一郎Rastogi Admin室原 豊明Lensen EvaAgiro AbyKhezrian MinaChen Genshi森田 奈瑠Pollack Charles
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抄録

【目的】高カリウム血症(HK)は心不全(HF)患者においてRAA系阻害剤(RAASi)のガイドラインに則った治療(GDMT)を達成する上で障壁となっている。そのため、国際的なHFガイドライン(GL)において、RAASiの適正化のためにHK管理として新規カリウム吸着剤の使用を推奨している。【方法】本観察研究は米国(Optum MarketClarity)と日本(Medical Data Vision)のデータを使用した。ヨーロッパにおけるデータ抽出は進行中である。対象は、2019年7月から2021年7月(米国)、または2020年5月から2021年9月(日本)にHF診断を受け、Index HKイベント(ICD-10 E87.5 または血清カリウム値>5.0mmol/L)を有する患者とした。また、今回の解析におけるRAASiはAngiotensin-converting enzyme inhibitors(ACEi)とAngiotensin-receptor blocker (ARB)とし、HKイベントを起こした直後の用量について、各地域のGDMTターゲット用量に応じて記述した。そして、マッチングなしのカプランマイヤー法を使用し、3か月時点のHF複合アウトカム(HF入院・緊急受診)をHKイベント後のRAASiのターゲット用量に対して50%以上、および50%未満に分けて記述した。【結果・考察】30,985名(米国)、24,977名(日本)の患者が組み込まれ、平均年齢は69.1歳(米国)、76.7歳(日本)、男性の割合は53%(米国)、61%(日本)であった。Index前にHK既往を有する割合は42%(米国)、31%(日本)であり、HKイベント前にACEiは20%(米国)、6%(日本)、ARBは12%(米国)、20%(日本)で使用されていた。Index時にRAASiを使用していた患者のうち30-40%がHKイベント後にRAASiを中止、もしくは減量されていた。また、Indexから3か月以内に新規カリウム吸着剤が使用されていた割合は1%未満であり、3か月時点でのHF複合アウトカムのリスクは、GDMTターゲット用量に対するRAASiの用量が50%以上の患者と比較して、50%未満の患者において有意に高かった。【結論】RAASi療法の用量を維持し、新規カリウム吸着剤を用いるHK管理がGLで推奨されているにも関わらず、カリウム吸着剤の使用は少なかった。代わりとして、HKイベント後にRAASi治療の中止、もしくは減量が行われていた。また、GDMTターゲット用量の50%未満のRAASi療法は、重篤なHFアウトカムの高いリスクと関連が見られた。本研究は、HF患者のより良い臨床転帰を達成するために最適なRAASi療法とHK管理の必要性を強調している

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© 2022 日本臨床薬理学会
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