主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
【目的】緑茶に含まれる主要カテキンであるエピガロカテキンガレートは抗ウイルス作用を有することが基礎研究により示されている。一方、ヒトを対象とした研究では、インフルエンザをはじめとする急性上気道炎予防効果に関する結果は一貫性がなく、カテキン濃度の相違に着目した研究は少ない。そこで本研究では、緑茶うがいにより、カテキン濃度依存的に急性上気道炎の発症に違いがみられるかを、非盲検ランダム化比較試験により検討した。
【方法】静岡県立大学および明治大学に在学中の健康成人209名(平均20.9歳、男63名/女146名)を対象とし、十分なインフォームドコンセントによる文書同意を得た後、カテキン高濃度群(総カテキン濃度:約80mg/dL)、カテキン低濃度群(総カテキン濃度:約40mg/dL)、水群の3群にランダムに割り付け、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期の2021年12月~2022年2月にかけて、1日3回、12週間うがいを実施した。急性上気道炎の発症状況と併せ、外出・マスク着用・手洗い・手指消毒の実施の有無を毎日、自記式調査票により記録した。解析対象集団としてはFull Analysis Set (FAS)解析およびPer Protocol Set (PPS)解析(うがい実施率80%以上)を設定し、急性上気道炎発症の群間差を比較した。
【結果・考察】12週間の介入による急性上気道炎の発症率はFAS (PPS)解析対象者201名(161名)において、カテキン高濃度群7.6(7.3)%、カテキン低濃度群10.8(10.0)%、水群12.9(14.3)%であり、群間の統計学的有意差は見られなかった(FAS解析;p=0.593、PPS解析; p=0.472、ログランク検定)。インフルエンザの発症はなく、COVID-19の発症は全体で3名だった。いずれの群においても、予防対策実施率が非常に高く(全体でマスク着用率91.0%、手洗い率97.1%、手指消毒率89.1%)、COVID-19流行中であったため予防対策への意識が高く、急性上気道炎を発症しにくかった状況が考えられた。
【結論】急性上気道炎予防における緑茶うがいのカテキン濃度依存性に関して結論を得るには至らなかった。今後は、より大規模な人数での検討が必要である。