日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_2-C-O06-5
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一般演題 口演
ヒト母乳由来エクソソームによるアレルギー発症抑制の可能性に関する検討
*田中 祥子神谷 太郎穂満 怜奈油谷 遥影山 友香榎本 実里大井田 紗希菊地 美里村上 さなえ遠藤 美緒桜井 基一郎水野 克己
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抄録

【背景】エクソソームは, 30~100nmの細胞外小胞であり, ヒト母乳中, 及びウシ乳汁中に豊富に含まれている.エクソソームに内包されるDNA, RNA, 脂質, タンパク質が, 細胞間や組織へのシグナル伝達の役割を担っていると考えられている.免疫の恒常性維持に重要なTreg細胞は,CD4,CD25および転写制御因子であるFoxp3を発現し,Th1/Th2バランスの不均衡を是正する役割を担うことが明らかとされている.Foxp3遺伝子のプロモーターやTreg-specific demethylated region (TSDR) を含むCNS2イントロン領域のCpGメチル化によって,Foxp3遺伝子の発現が制御される.【目的】母乳由来エクソソームが, アレルギー発症あるいは制御に関与するT細胞に及ぼす影響を明らかとするために, ヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるDNAメチル化酵素およびTreg細胞の誘導作用について検討を行った.【方法】 母乳は昭和大学小児科及び同母乳バンクより提供して頂いた. 超遠心沈降法を用いてエクソソーム濃縮を行い,細胞外小胞分画を試料とした.平衡密度勾配遠心法により精製し,ウエスタンブロッティング法によるエクソソームマーカーの発現,およびPKH67で標識しCD4+T細胞における取り込みを確認した.抗CD3抗体あるいはコンカナバリンA(ConA)存在下に, 健常成人のPBMCにエクソソームを添加し,48時間, 72時間あるいは120時間培養を行った.ウエスタンブロッティング法によるDNMT1タンパク質の検出を行った. CD4+T細胞におけるTreg細胞の割合および培養上清中のサイトカイン濃度の測定には,フローサイトメーターを使用した.【結果・考察】健常成人PBMCに ConA刺激を行った後, エクソソームを添加し,培養上清中のサイトカイン濃度を測定した結果,非添加群と比較してIL-4およびIL-10濃度が有意に低値を示した (p<0.01). CD3非添加群でエクソソーム濃度依存的にDNMT1タンパク質発現量およびCD4+T細胞中のTreg細胞の割合が増加する傾向が見られた. 【結論】ヒト母乳由来エクソソームが,過剰なサイトカイン産生を抑制し, Treg細胞を誘導する可能性が示唆された.

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