主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
【目的】2019年12月に始まったCOVID-19の世界的なパンデミックに対して、本邦でも新型コロナウイルスワクチンが利用可能となり、これまでにさまざまな臨床的有用性が報告されてきた。しかし、2回目のワクチン接種から6ヵ月以内に中和抗体の有意な低下が観察されることが明らかとなり、3回目の追加接種が開始されるようになった。そこで、本研究では1~3回目のワクチン接種後の副反応の出現状況とその後の血中中和抗体価との関係を調査し、今後のワクチン接種の必要性を検討するための実臨床におけるデータを得ることを目的とした。【方法】積善会日向台病院では2021年4月以降に職員に対して新型コロナウイルスワクチン(BNT162b)接種を実施し、接種後8日間の体調チェックシートへの記載を被接種者が各自で行なった。そのうちの240名を対象とし、1、2回目接種(2021年4月~5月)後の2021年10月と、3回目接種(2022年1月~2月)後の2022年4月に、血中中和抗体価(抗SARS-CoV-2 RBD S1 IgG抗体)を測定し、チェックシートの記載内容(体温、副反応の有無など)、対象者の属性(年齢、性別)と抗体価との関係を評価した。また抗体価と関連する要因を特定するために重回帰分析を行った。【結果・考察】抗体価は、1、2回目接種後が32.4±20.3 AU/mL(接種後平均140.3日)、3回目接種後が81.8±53.6 AU/mL(同67.0日)であった。1、2回目接種後の抗体価には性差はみられなかったが、3回目接種後の抗体価は女性よりも男性の方が有意に高値となった。また、女性では高齢なほど1、2回目接種後の抗体価が低値となったが、男性ではその相関はみられなかった。1~3回目いずれの接種後も、全身性の副反応(発熱、倦怠感、頭痛など)を訴えた者は年齢が低い傾向にあった。また2回目接種後において、発熱を認めた者は抗体価が有意に高値となった。さらに、重回帰分析の結果から、ワクチン接種後の抗体価は、年齢が低いほど、また接種後の発熱を認めた場合の方が高値となった。以上の結果から、ワクチン接種後の抗体価の推移には男女差があり、年齢と全身性の副反応の有無が抗体価と関連していると考えられた。【結論】ワクチン接種後の抗体価は経時的に減少するため、抗体価を維持するには追加接種が必要とされるが、全身性の副反応の有無が抗体価と関連しているという本研究の結果は、副反応を恐れて接種を回避する者に接種を促すきっかけになり得ると考えられた。