主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
【背景】胆管癌の正診率は未だ十分でない。CTやMRI、内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)等の画像診断と、胆管生検や胆汁細胞診等の病理診断を総合して診断されるものの、しばしば診断困難な症例に遭遇する。5-アミノレブリン酸 (5-ALA)は細胞内でミトコンドリアにおけるヘム合成に利用される天然アミノ酸の一種で、その中間代謝産物であるプロトポルフィリンIX(PpIX)は、青色可視光の照射により赤色蛍光を発するという光感受性物質である。正常細胞と癌細胞ではPpIXの蓄積性に差があり、前者においてPpIXは速やかに最終合成産物であるヘムに代謝される一方、後者ではヘム代謝のリプログラミングに伴い細胞内に蓄積するため、腫瘍特異的な蛍光を発すると考えられている。このような5-ALAを利用した癌の光線力学的診断は、グリオーマや膀胱癌では既に実用化されているが、胆管癌における有用性については明らかでない。【目的】5-ALAを利用した光線力学的診断法の胆管癌における応用可能性について検討する。【方法】ヒト胆管癌の切除検体、及びERC下生検検体より計4例、胆管癌患者由来オルガノイドを樹立した。また腫瘍周辺部からも同様の方法で組織を採取し、計2例、非癌部胆管由来オルガノイドを樹立した。これらのオルガノイドにおける5-ALA投与下でのPpIX蓄積レベルを蛍光顕微鏡にて評価し、その結果を比較検討した。【結果】樹立した胆管癌患者由来オルガノイドを免疫不全マウスの皮下へ移植すると、元来の切除検体と酷似した組織像を呈する皮下腫瘍が形成された。非癌部胆管由来オルガノイドからは皮下腫瘍は形成されなかったものの、in vitro下での組織像や遺伝子発現パターンは胆管上皮の特性を高度に保持していた。5-ALAを添加したところ、胆管癌患者由来オルガノイドは非癌部胆管由来オルガノイドと比較して、いずれも高いPpIXの蓄積を示した(40 -71% vs. < 4%)。【結論】5-ALAは胆管癌診断において有用である可能性がある。