日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-O09-1
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一般演題 口演
ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害剤 dapagliflozinによる脂質プロファイル改善およびメカニズムの検討
*三好 達也谷手 智河渕 真治伊藤 由佳子加藤 健一郎早川 哲雄栄田 敏之
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抄録

【目的】経口糖尿病治療薬であるナトリウム・グルコース輸送体2阻害剤dapagliflozinについては、慢性心不全、慢性腎臓病の効能・効果が追加承認され、血糖降下作用だけではなく、多面的効果に注目が集まっている。そこで本研究では、2型糖尿病患者を対象として脂質プロファイルの改善効果を評価するとともに、脂質異常症モデルラットを用いてそのメカニズムについて基礎的検討を行った。

【方法】2型糖尿病患者72名を対象とし、dapagliflozin投与開始前(ベースライン)および投与開始1、3、6、9、12か月後において、triglyceride値、LDL-C値、HDL-C値を評価した。また、dapagliflozinの血漿中濃度を測定し、服薬アドヒアランスを評価した。なお、本検討は市立砺波総合病院、京都薬科大学における倫理審査委員会の承認を得て実施した。一方、Wistar系雄性ラットを用い、常法に従い、poloxamer 407 0.5 g/kgを腹腔内投与し、脂質異常症モデルラットを作製した。Dapagliflozinを常用量に相当する0.1 mg/kgで1日1回4日間反復投与し経時的に採血を行った。また、対照群として0.1%CMCを投与した。測定キットを用いて、triglyceride、総cholesterol濃度を評価した。

【結果・考察】2型糖尿病患者においてtriglyceride値はベースラインと比較して12か月後で有意に低下した(-13±45 mg/dL、p=0.028)。また、服薬アドヒアランスが良好であるほどより大きく低下する傾向にあった。なお、LDL-C値、HDL-C値は12か月後で変化しなかった。一方、脂質異常症モデルラットにおける最終投与24時間後のtriglyceride濃度は、dapagliflozin群で75.3±32.3 mg/dLとなり、対照群の110.4±37.9 mg/dLと比べて有意に低下した(p=0.028)。なお、総cholesterol濃度は変化しなかった。Poloxamer 407はリポタンパク質リパーゼ(LPL)阻害を介してtriglyceride濃度を上昇させることから、dapagliflozinのtriglyceride濃度低下作用へのLPLの関与が考えられた。

【結論】2型糖尿病患者においてtriglyceride値は低下した。この作用へのLPLの関与が考えられた。

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