日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-P-094
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一般演題 ポスター
臨床研究法施行前の日本の第3相臨床試験における試験デザインの米英との比較と法施行後に見られた変化
*山内 祐子三輪 宜一植田 真一郎
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抄録

【目的】臨床研究は、研究費の出所によって主に製薬会社が資金を提供する商業試験と、国や行政機関などが資金を提供する非商業試験に分けることができる。欧米の多くの国では、商業試験、非商業試験ともに法律で規制されているが、日本では最近まで非商業試験を規制する法律が存在しなかった。しかしながら近年数々の臨床研究不正が問題となり、2018年に臨床研究法が施行された。そこで今回我々は、2015年に日本、米国、英国で行われた第3相試験を抽出し、その試験デザインの違いや日本で臨床試験法制定後に見られた変化についても検討した。【方法】2015年に日本、米国、英国で行われた第3相試験を臨床研究登録データベースから抽出し、その試験デザインの違いを資金源で区別して解析した。さらに日本で臨床試験法制定後に見られた変化についても調査した。【結果・考察】2015年の各国の臨床試験登録数は計7382件で、このうち第3相試験として登録されていた商業試験1208件、非商業試験308 件を解析対象とした。日本では米国や英国と比較してランダム化比較試験の割合が低く、非商業試験での盲検試験が少ない傾向がみられた。また、非商業試験のシングルアーム試験でのがん、希少疾患の割合は低く、特にがんは全く登録されていなかった。アウトカム設定では、非商業試験における真のエンドポイントの採用率が5%と米国や英国に比べ極端に低かった。日本の臨床試験法施行後の解析では、非商業試験の登録数の増加を認め、シングルアーム試験でのがん・希少疾患の割合が商業・非商業ともに増加していた。アウトカム設定については、真のエンドポイントの採用が、非商業試験で大きく増加していた。【結論】2015年の臨床研究法施行前の段階では日本の非商業第3相試験は登録数も少なく、研究の質も米国や英国と比較して低かったと考えられる。しかしながら法施行後は登録数の増加や真のエンドポイントの採用率の向上が認められ、法施行が臨床研究の質の向上に一定の役割を果たしていることがうかがわれた。

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