主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
【目的】CRCが担う治験支援業務は、多岐にわたり業務の効率化を図ることは容易ではない。我々は、過去に実労働時間を指標とした実態評価法によるCRC業務の可視化を行い、業務効率化に努めている。今般、当院では職種を考慮しない担当制(従来方式)から薬剤師及び看護師の専門性を考慮した業務分担制(分担方式)へ変更した。この業務体制の変更がCRC業務の効率化に与える影響を評価することを目的に、CRC業務の実態調査を行った。
【方法】調査期間は業務分担制導入前後の6ヵ月間とした。調査対象は各CRCが実施した治験支援業務とし、調査内容は日本SMO協会の「CRCの主な業務」を一部改変して分類し、各治験支援内容別に費やした実労働時間を調査した。当院で特に件数の多い血液腫瘍内科(血内)の治験においては更に詳細に業務実態変化を調査した。
【結果】調査期間内の治験数は従来方式が56件(血内20件)、分担方式が60件(血内24件)であった。6ヵ月間の全体の延べ業務時間は従来方式の3958hrから分担方式が4515hrへと増加したが、血内の治験1件あたりの業務時間は従来方式の105.8hrに対し分担方式が71.9hrへと減少した。支援内容別では、治験担当医師対応業務は従来方式の80hr/件から分担方式で43.6hr/件へと減少し、中でも症例報告書作成及びEDC入力補助業務が従来方式の72%(57.4hr/件)から分担方式が56%(24.5hr/件)、被験者のスケジュール管理業務が従来方式の10%(8.1hr/件)から分担方式が9%(4.1hr/件)へと減少した。また、被験者適格性調査の補助業務等が従来方式の3%(1.9hr/件)から分担方式が5%(2.3hr/件)へと増加した。
【考察】当院のCRC業務は血内の業務時間が多く、中でも従来方式では治験担当医師対応業務の割合が極めて大きい状況であった。そこで分担方式により各職種の特性を発揮することで、症例報告書作成等に要する時間を大幅に削減でき、血内に関するCRC業務時間を減少させることができた。加えてこの削減された時間を被験者適格性調査の補助業務等の他業務に割り振ることで、治験業務全体の質向上に貢献できた可能性がある。これまでもCRC業務の変更に伴う改善効果に関する報告は散見されるが、施設毎に評価項目や方法が異なるため、施設間比較や一般化可能性という点で課題があった。しかし、本方法のように実労働時間を指標とする実態評価は、CRC業務を定量的に可視化できることから標準的なツールとしても有用であることが示唆された。